猫の春ストレスってなんだろう?

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猫の春ストレス

ツツジの開花

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

猫の春ストレスという言葉をご存知でしょうか。私達人間から見ると自由気ままに暮らしているように見える猫ですが、実はとても保守的で変化に弱いのです。季節の変わり目でもあり、また日本人にとっては生活の節目ともなる春は何かと変化が多く、猫は飼い主様が気付かぬ内にストレスを溜め込んでしまい、いつもとは異なる行動をしたり、場合によっては病気に罹りやすくなったりもします。

 

そこで、飼い猫達が春に溜めやすいストレスを総称して「春ストレス」と呼んでいるのです。今回は、猫の春ストレスの原因や現れやすい症状、対処法などについてお話します。

 

春ストレスの原因

野良猫の喧嘩

季節の変わり目でもあり生活の節目ともなる春には、気候、生態系、猫自身の生理現象や飼い主様の生活様式など、さまざまな変化が現れます。猫の春ストレスの原因と考えられる要因をご紹介します。

 

<大きく上下する寒暖差>

冬から夏に変わる境目の季節が春ですが、その気候の変化は平準化されていません。日中は夏のように暖かくても朝晩の冷え込みは激しかったり、昨日と今日の温度差が10℃以上もあったりと、その変化には人間でもついていくのが大変なくらいです。

汗をかいたり洋服を脱ぎ着したりすることで体温調節できない猫にとっては、激しい寒暖差がとても大きなストレスになります。

 

<アレルゲンのピーク>

関東地方は季節を問わず多くの花粉が飛散していますが、スギ、ヒノキやイネ科植物の花粉は春先にピークを迎えます。猫ちゃんの花粉症は、目ヤニや皮膚炎といった症状で現れることが多く、春先の猫ちゃんの大きなストレス要因の一つです。

またノミやダニも春先から活発に活動を始め、刺されてアレルギー症状を引き起こすとひどいかゆみが大きなストレスになります。

 

<発情期の野良猫>

野良猫を減らすためのTNRが進んでいない地域では、不妊・去勢手術を受けていない野良猫が多いのではないでしょうか。その場合、日照時間が長くなってくる春は、猫の交尾シーズンになります。

発情期のメス猫特有の大きな鳴き声や、オス猫同士の喧嘩の声などが頻繁に聞こえてくるようになり、また発情した猫のニオイなども飼い猫のストレスになることがあります。

窓から見える野良猫の姿やニオイ、声などから侵入者が来たと警戒したり、猫ちゃん自身は不妊・去勢手術を受けていたとしても、そわそわと落ち着きがなくなったりすることがあるのです。

 

<換毛期>

春は猫の換毛期です。冬毛から夏毛へと毛が生え変わるため、いつもよりも大量の抜け毛が発生します。セルフグルーミングで大量の抜け毛を飲み込んでしまうと、毛球症になりやすいです。毛球症になると、食欲不振、便秘、吐く、吐こうとしても吐けないなど、猫ちゃんは非常に苦しい思いをすることになります。

 

<生活環境の変化>

日本の会社や学校は4月始まりのところが多いため、春は入学、卒業、入社、転勤など、生活の節目となる季節でもあります。そのため、春は引っ越しの多い時期です。また飼い主様の生活時間帯が変わるといった変化もあるでしょう。こういった生活の変化が、猫ちゃんに大きなストレスとなることがあります。

猫は、自分の縄張りにいることで安心します。縄張り外にいる時には非常に警戒し、神経をピリピリと張り詰めた状態で過ごします。また意外にも保守的で、生活リズムの変化もストレスに感じる傾向が強いようです。

 

春ストレスの症状

元気がない猫

前述の春ストレスが原因となって春先に現れやすい行動の変化や罹りやすくなる病気をご紹介します。下記のような変化が見られた場合は、前述に挙げたような変化がなかったかどうかを振り返ってみてください。

 

<春ストレスとして現れやすい行動の変化>

・食欲がなくなる、元気がなくなる

・そわそわして落ち着かなくなる

・触られると嫌がる

・隠れて出てこない

・頻繁にグルーミングをする、またはしなくなる

・頻繁に粗相、または尿スプレーをする

・窓や玄関を開けた隙に脱走しようとする

・攻撃的になる

・夜鳴きする

 

<春ストレスが原因となり罹りやすい病気>

ストレスで免疫力が低下したり、アレルギーが発症したり、過剰なグルーミングにより脱毛したりといったことも起きやすくなります。春ストレス軽減の対処は、下記の病気の予防にも繋がります。

・特発性膀胱炎

・猫カゼ(3種混合ワクチンの接種で予防ができます)

・皮膚炎

・心因性脱毛症

 

春ストレスへの対策

狙いを定めた猫

それでは最後に、春ストレスへの対策についてお話します。

 

<寒暖差対策>

猫ちゃんが暮らしている環境の温度と湿度を、エアコン等で一定に管理しましょう。人にとって快適に過ごせる温度よりも少し低めが、猫ちゃんにとっての快適な温度です。当院の入院室は、20℃に設定しています。ただ、それでは人が寒すぎるということもあるでしょう。湿度を60%以下に維持できれば、もう少し温度が高くても、猫ちゃんも快適に過ごせるでしょう。

 

<発情期の野良猫対策>

不妊・去勢手術をしていても、いつもとは異なる外の様子に触発されるのか、春になると窓や玄関を開けた隙に外に脱走してしまう事故が多くなる傾向があります。窓や玄関の開け閉めには、普段以上に気を付けましょう。

またお庭に野良猫が来る姿を見て、自分の縄張りに敵が侵入してきたと思い、警戒をして尿スプレーなどをするようになることもあります。姿が見えたらカーテンを締めるなど、なるべく野良猫の気配を室内に伝えないような工夫をすると良いでしょう。

また意識的にいつもよりも多めに遊んであげることで、猫ちゃんのストレス発散をしてあげることができます。

 

<アレルギー対策>

アレルゲンを持ち込まないことが大切です。高性能な空気清浄機を設置する、洗濯物は室内干しにする、飼い主様の衣服ケア、こまめに掃除機をかけるなどの対策で、なるべく猫ちゃんを花粉やノミ・ダニといったアレルゲンから遠ざけましょう。

また、猫ちゃんに負担のかからないタイプのお薬も出ていますので、完全室内飼いの猫ちゃんにも定期的な駆除薬の投与をおすすめします。

 

<換毛期対策>

換毛期は、短毛種の猫ちゃんでも大量な抜け毛が出ます。毎日こまめにブラッシングをし、セルフグルーミングで飲み込んでしまう抜け毛の量を極力減らしてあげましょう。

また、部屋中が抜け毛だらけになりますので、掃除機もこまめにかけて、室内をきれいな状態に維持するようにしてください。

 

<生活環境の変化への対応>

猫ちゃんをかわいがっていた息子さんが独立して家を出たとか、飼い主様の出勤時間が今までよりも1時間早くなった等、飼い主様にとってはあまり大きな変化に感じなくても、猫ちゃんにはとても大きなストレスになっていることがあります。

ちょっとした変化だからと軽く考えず、生活環境や生活リズムに変化が生じた場合は、いつもより少し猫ちゃんのことを気にして様子を観察してください。そして、できるだけ猫ちゃんが安心して過ごしたりストレスを発散したりできるように、いろいろと工夫してあげましょう。

 

いろいろな面で変化の多い春は、いつもより少し注意深く猫ちゃんの様子を観察してあげてください。そして、行動や体調の些細な変化を見逃さず、思い当たる春ストレスがあれば、軽減するように工夫してあげましょう。

 

ポイント

猫のブラッシング

以下のような要因が、猫ちゃんにとって春ストレスの原因になりやすいです。春はいつも以上に注意深く猫ちゃんの様子を観察し、行動や体調の些細な変化を見逃さず、ストレスを軽減するように工夫しましょう。

 

・大きく上下する寒暖差

・アレルゲンのピーク

・発情期の野良猫

・換毛期

・生活環境の変化

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