秋に気を付けたい犬猫が食べると危険な食材

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冬に向けて食欲増進する秋

必死にマテする犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

記録的な猛暑もようやく終りを迎え、一気に秋の気配が訪れました。急激な温度変化は体調に影響を与えるため、ワンちゃんや猫ちゃんの健康管理に気を抜けない飼い主様が多いのではないでしょうか。

 

ところで、秋は暑すぎず寒すぎない気候であること、日が短くなり夜の時間が長くなることなどから、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋などと呼ばれ、人々がさまざまなことを楽しむ季節です。中でもよく耳にするのが、食欲の秋ではないでしょうか。

 

実りの秋とも言われ旬の食材が多く、食べ物が美味しいことに加えて、夏に落ちていた食欲が回復し、来る冬に備えて体がしっかりと栄養を補給しようと欲するからだと考えられています。

 

ところで食欲の秋は、人に限った話ではありません。動物たちにも、秋になると食欲が増える傾向が見られます。夏に衰えた食欲が回復することも一因ですが、秋になると食欲が増える理由が、体の仕組みの中にも組み込まれているのです。

 

幸せホルモンとしてよく知られているセロトニンは、喜び・快楽などを感じさせるドーパミンや、恐怖・驚愕などを感じさせるノルアドレナリンの分泌量をコントロールし、精神を安定させます。それだけではなく、満腹中枢を刺激して食欲を抑える役割も担っています。ところが日照時間が短くなるとセロトニンの分泌量が減ってしまうため、秋になると食欲を抑えられなくなるというわけなのです。

 

では、秋に旬を迎えてよく食卓に上るけれども、ワンちゃんや猫ちゃんが口にしてしまうと危険な食材をご紹介しましょう。

 

旬だけど危険:野菜編

なす田楽

 

◯ナス

5〜10月頃が旬のナスは、漬ける、炒める、焼く、揚げる、煮るなど、どんな調理法でも美味しく食べられる便利な食材ですが、アルカロイドという天然毒素を含んでいます。アルカロイドを多量に摂取すると、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、めまいなどの消化器症状を引き起こします。

最近のナスは品種改良でアルカロイドの含有量が少なくなってきていますので、ワンちゃんが食べても問題はありません。ただし消化しやすいように、加熱して柔らかくしてあげた方が安心でしょう。

猫ちゃんには植物性の食材を消化する能力がありませんし、体も小さいのでアルカロイドの影響が考えられるため、食べさせない方が良いでしょう。

 

◯ジャガイモ

ジャガイモの旬は、8〜10月です。煮物や汁物、鍋物などに欠かせない食材ですが、天然毒素の一種であるソラニンを含んでいます。ソラニンはジャガイモの芽の部分や緑色になった部分に多く含まれています。使用するジャガイモを選別し、芽の部分を取り除いた上でしっかりと加熱すれば、ワンちゃんや猫ちゃんが食べても心配はありません。

 

◯里芋

里芋の旬は9〜10月頃です。煮物や汁物、お酒のアテなどによく使われる食材です。独特の粘り気を持っていて、調理をすると手が痒くなる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。これは、シュウ酸カルシウムの影響です。

ワンちゃんや猫ちゃんが調理前の里芋に触ってしまうと、シュウ酸カルシウムで皮膚炎を起こしてしまったり、誤って飲み込み、胃などの粘膜が炎症を起こしたりする可能性があるため、生の里芋には注意しましょう。なおシュウ酸カルシウムは水溶性なので、茹でると茹で汁にかなりの量が溶け出します。結石の原因になるリスクが高いため、茹で汁にも注意が必要です。

 

◯長ネギ

長ネギの旬は、11〜3月ととても長いです。味噌汁、焼きネギ、鍋物など、冬の間長く活躍する食材です。また形状が長いため冷蔵庫の野菜室に収まりづらく、しばらくそのまま台所に置きっ放しにしてしまうこともあるかもしれません。

ネギに含まれるアリルプロピルジスルフィドという成分は、ワンちゃんや猫ちゃんの体内に入るとヘモグロビンを酸化させてしまい、赤血球を壊してしまいます。赤血球が壊れることを溶血と言い、これが原因で溶血性貧血を起こします。貧血になると体中の細胞に酸素が行き渡らなくなってしまうため、重度な場合は命に関わる場合もあります。

この成分の毒性は、熱しても消えません。どんなにしっかり煮込んでも、また煮汁だけであってもワンちゃんや猫ちゃんの口に入らないように気をつけてください。買ってきたら、すぐに短く切って冷蔵庫に入れてしまいましょう。

なおアリルプロピルジスルフィドは、長ネギだけでなく、ネギ類全般に含まれています。玉ネギ、にんにく、にら、生姜なども同じですので、気を付けましょう。

 

旬だけど危険:果物編

ぶどうといちじく

 

◯ぶどう

7〜11月が旬のぶどうも、どのご家庭でもよく召し上がる秋の食材だと思います。そのまま食べるのはもちろん、レーズンやジュース、ワインなどの加工品を口にする機会も多いでしょう。しかし、ぶどうもワンちゃんや猫ちゃんが口にすると危険な食材です。

実は、ぶどうに含まれているどの成分に毒性があるのかは分かっていません。しかし、ワンちゃんや猫ちゃんがぶどうを口にすると、嘔吐、下痢、元気消失、食欲低下が現れ、急性腎不全を引き起こすこともあることが分かっています。

毒性の原因となる成分が分かっていないため、実だけではなく、種、皮、枝なども口にしないよう、十分な注意が必要です。

 

◯いちじく

8〜11月が旬のいちじくは、お庭で栽培されているご家庭もあるかもしれません。またぶどうと同じ様に、ドライフルーツやジャム、ソースなどの加工品として口にすることも多いでしょう。このいちじくも、ワンちゃんや猫ちゃんにとっては危険な食材です。

いちじくに含まれているフィシンというタンパク質分解酵素は、人のタンパク質消化を助け、二日酔いに効くと言われていますが、ワンちゃんや猫ちゃんにはその効果が強すぎて害悪になってしまいます。

具体的には口の中の粘膜が荒れ、よだれをダラダラと垂らしたり口内炎ができたりといった症状が現れます。悪化すると食道まで広がってしまい、食べ物や水を飲み込めなくなることもあります。

なお、お庭にいちじくの木がある場合は、葉に含まれているソラレンもワンちゃんや猫ちゃんにとって下痢や嘔吐を引き起こすことがありますので、気を付けてください。

 

こんな食材にも注意が必要

さんまの塩焼き

 

◯さんま

9~10月が旬のさんまは、刺し身でも焼き魚でも美味しく食べられる、秋ならではの食材です。しかしアニサキスという寄生虫のリスクが高い食材です。アニサキスを生きたまま食べることで、激しい腹痛や嘔吐、下痢といった症状が現れます。

アニサキスは熱に弱いので、必ず加熱調理したものを与えてください。飼い主様がお刺し身で召し上がる場合は、つまみ食いされないように注意が必要です。

アニサキスは内臓にも寄生しています。苦味が強いため好んで食べたがることは稀だと思いますが、下ごしらえで取り除いた内臓の処理にも十分注意しましょう。

 

◯銀杏

9〜11月半ばが旬の銀杏も、秋に楽しみな食材の一つです。フライパンで煎る、茶碗蒸し、お米と一緒に炊くなど、お酒のアテからメインのご飯など、さまざまに楽しめます。

銀杏に含まれているギンコトキシンという神経毒はビタミンB6にとても似ており、大量に摂取すると脳がビタミンB6と間違えて体内に取り込もうとしてしまいます。その結果、ビタミンB6欠乏症を引き起こしてしまいます。そのため、人も銀杏の食べ過ぎには注意が必要です。

ワンちゃんや猫ちゃんは体が小さいため、少量でも中毒症状を引き起こす可能性があります。現れる症状は頭痛、吐き気、嘔吐、けいれんなどで、最悪の場合には命に関わることもあり得ます。

下ごしらえをする前の殻がついたものを誤飲してしまうと、喉に詰まらせたり消化管粘膜を傷つけたりする可能性もありますので、ワンちゃんや猫ちゃんの手の届くところに放置しないことも大切です。

 

ポイント

食事中の猫

 

ポイント

・涼しい秋になると、夏に落ちた食欲が回復します。

・秋の短い日照時間が食欲を抑制するセロトニンの分泌量を減らすことも、食欲増進の一因です。

・秋には旬の食材が多く、食卓に美味しい物が並ぶため更に食欲を増進させます。

・秋に旬を迎える食材の中にも、犬や猫にとって危険な食材があるため注意が必要です。

・犬猫が口にすると危険な秋の食材には、ナス、ジャガイモ、里芋、長ネギなどのネギ類、ぶどう、いちじく、銀杏等が挙げられます。

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