飼い主様しか気付いてあげられない犬や猫のストレスサイン
愛犬・愛猫のストレスサインを察知しましょう
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
犬や猫にも感情があります。私たち人間と同じように嫌なこと、我慢を強いられるようなことに対してはストレスを感じます。そしてそれが長く続くことで、心や体の病気に発展してしまいます。
犬や猫たちは、ストレスを感じるとストレスサインを発します。飼い主様がそのストレスサインに気付いて、ストレスの原因を取り除くことができれば、愛犬・愛猫の心因性の病気を予防することができます。
そこで今回は、犬や猫がストレスに感じる原因やストレスサインについてお話ししたいと思います。
犬や猫のストレス要因
犬や猫は、同じようなことに対してストレスを感じたり、犬や猫に特有なストレスを感じたりしています。犬や猫に共通的な要因と、犬や猫に特有な要因を下記にまとめます。
<犬や猫に共通するストレス要因>
・環境の変化(引越しや模様替え、他のペットも含めた家族の増減等)
・食事や飲み水が適切、適量ではない
・飼い主様ご自身がストレスを抱えている(ご家族内の争い事等も含みます)
・飼い主様に構ってもらえない
・飼い主様から過剰に構われる
・大きな音(花火、雷、工事の騒音、子供の叫び声、人の大声等)
・避妊・去勢手術をしていないことによるストレス(発情期)
・睡眠不足
・欲求不満
・運動不足
・不衛生な環境
・犬や猫の嫌いなにおい(アロマ、香水、芳香剤等)
・長時間の留守番
・適切なケアをされていない(爪が伸びている、健康管理されていない等)
<犬に特有なストレス要因>
・ある時は過干渉、ある時は放置といった一貫性のない飼い主様の接し方
・散歩に連れて行ってもらえない
・犬らしい行動の禁止
<猫に特有なストレス要因>
・相性の悪い他のペットや複数の猫との同居
・飼い主様以外の来訪者
・上下運動できる場所がない
・爪とぎをできる場所がない
・トイレが汚い
・猫によっては蛍光灯や家電品が長時間発する低い音もストレスになる場合があります
・犬にとってアイコンタクトは絆を結ぶ大切な行為ですが、猫の目をじっとみつめると猫にストレスを与えます
猫は、蛍光灯の光がチカチカ点滅しているように感じている可能性があることが分かっています。そのため、蛍光灯が苦手な猫もいるようです。もし愛猫が蛍光灯を嫌がっているように感じた場合は、LEDに変更すると良いかもしれません。
犬や猫のストレスサイン
では、前述のようなストレス要因による刺激を受けた時に、犬や猫がどのようなストレスサインを表すのかについて、同じように共通的なサインと犬や猫に特有なサインに分けてまとめます。
<犬や猫に共通するストレスサイン>
・犬は無駄吠えを、猫はよく鳴くようになる
・食欲が低下したり水を飲まなくなったりする
・下痢や嘔吐をする
・急に攻撃的になる(威嚇をする、噛む、猫の場合は引っ掻く等)
・よくあくびをするようになる
・極端に怯えるようになる
・排泄の回数やトイレ以外の場所で粗相をする回数が増える
・目をそらしたり逃げたりする
<犬に特有なストレスサイン>
・自分のしっぽを追いかけてぐるぐると回る
・パンティング(早くて浅い呼吸)をする
・眉をひそめて耳を後ろに倒し、嫌そうな、もしくは困ったような表情をする
・ゆっくり動く、きょろきょろする、うろうろ歩くといった行動が見られる
<猫に特有なストレスサイン>
・じっとして動かなかったり、隠れて出てこなくなったりする
・あちこちで爪とぎ、自分の体の擦り付け、尿スプレー等をして自分のにおいをつける
・耳を後方に向けて裏返しにピント立て、憮然とした表情で不機嫌そうにしている
・全く毛繕いをしなくなる、もしくは長時間毛繕いをし続ける
ストレスサインはそれそのものがストレス解消につながり、一過性で終わるように見える場合もありますが、ストレスが長く続くとだんだんエスカレートしてきて、最終的には消化器症状(下痢、嘔吐等)を起こしたり、免疫力が低下して感染症に罹ったり、猫の場合は突発性膀胱炎に罹ったりすることも少なくありません。また、犬も猫もストレスが原因で分離不安症、常同障害、恐怖症、心因性脱毛症といった心の病気を発症することもあります。
小さくて軽度な段階でストレスサインに気付いて、原因となっている環境や要因を取り除くようにしてあげましょう。
ストレスフリーと甘やかしは別物です
ストレスを与えないためにと甘やかせすぎるのもいけません。普段、飼い主様が犬や猫の思い通りになるようにしてあげていると、犬や猫は嫌なことを我慢するとか家族以外の他者や環境でうまく過ごすことができなくなってしまいます。しかし地震や洪水などの非常時には、いつものように過ごすことはできません。甘やかせ過ぎは、いざという時に本来の災難に輪をかけて不必要で大きな不安を与えることになってしまいます。
特に犬の場合は、最初は留守番ができない子たちも、短時間の留守番から練習を始め、飼い主様が必ず帰宅することを理解させれば、きちんと留守番ができるようになります。「お座り」や「待て」も、正しい方法でトレーニングすればきちんとできるようになります。しつけの基本は「叱らずに褒めること」です。
犬や猫たちが安心して落ち着ける場所を作り、快適な室温や湿度を保ち、必要な栄養や水を適量与えて、家族みんなで快適な暮らしができるようにしてあげましょう。
飼い主様がストレッサーにならないように気をつけましょう
特に注意をしていただきたいのは、飼い主様ご自身が犬や猫のストレスの原因になっていることが多いということです。ストレスの要因に中にも、飼い主様やそのご家族が出てくるものがありましたが、犬や猫は飼い主様やそのご家族の気持ちをとても敏感に察知します。それがそのまま自分たちのストレスになってしまうのです。
大声で怒鳴り合いながら喧嘩をするとか、口も聞かずに冷たい空気が流れているような場合も、愛犬や愛猫はストレスに感じていますし、飼い主様ご自身のイライラもそのままキャッチしてしまいます。また、飼い主様は可愛がっているつもりでも、あまりにも構われ過ぎるのもストレスに感じてしまいます。
環境やトレーニング方法だけではなく、ぜひご自身やご家族のストレスも適切に発散させて、皆で楽しく暮らせるように心掛けてみてください。
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