寒さに弱い犬や猫の特徴は?寒さに弱い子たちを冬から守るために
冬に体調を崩しやすい理由
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
暑い夏もようやく終わり、肌寒い日も増えてきました。もうしばらくすれば、本格的な冬の到来です。高温多湿だった夏から一転、低温で乾燥した気候に変わります。
動物の病原体となるウイルスや細菌の多くが低温で乾燥した気候を好むため、冬は病原体が活発になる季節です。さらに乾燥した空気は喉や鼻の粘膜を乾燥させ、病原体の体内への侵入を防ぐバリア機能を低下させます。
つまり、寒さや空気の乾燥は、動物を感染症にかかりやすくする条件を備えているのです。他にも寒さが動物に与えるマイナスの影響は多く、冬には、感染症以外にも泌尿器系や関節の病気などにかかりやすくなります。
そこで、ワンちゃんや猫ちゃんに冬でも元気に過ごしてもらうため、寒さと乾燥を防ぐ対策が必要になってきます。今回は、特に寒さに弱いワンちゃんや猫ちゃんたちの特徴と、寒さから守るためのポイントについてお話しします。
寒さに弱い子たちの特徴
犬や猫の身体には、暑さや寒さに対処するためのさまざまな仕掛けが用意されています。
例えば体温を下げる仕組みとして、身体の表面を流れている血液の熱を放散するというものがあります。身体が大きいと、体積に比べて表面積が小さくなるため、放散する熱の量が自然と抑えられます。そのため、寒冷地に住む動物たちは、総じて大きな身体になる傾向があります。
また脂肪には、断熱材のように熱を逃さない効果があります。そのため、寒冷地で暮らす動物は、体脂肪も多めについています。さらに筋肉は、熱を作るという役割を持っています。そのため、筋肉が多い方が、寒さに強いと考えられています。
これらの身体の仕組みがわかると、身体が小さく、脂肪や筋肉があまりついていない体格のワンちゃんや猫ちゃんは、基本的に寒さに弱いということがわかってくるでしょう。
さらに、大抵のワンちゃんや猫ちゃんは、全身がふさふさとした被毛に覆われています。この被毛には、シングルコートとダブルコートという2つのタイプがあります。寒冷地生まれのワンちゃんや猫ちゃんの被毛は、ダブルコートといって、外側を覆う長めで太い毛と、その下側に生えている柔らかくて短めの2層の毛を持っています。この下側の毛の中に空気が溜められ、体温を逃さない仕組みになっているのです。シングルコートは、外側の毛の1層しか持っていないため、ダブルコートと比べると防寒性に劣ります。
つまり、シングルコートの被毛を持つワンちゃんや猫ちゃんたちも、寒さに弱いということがわかります。もちろん、ヘアレスドッグや無毛種と呼ばれているワンちゃんや猫ちゃんたちも、寒さに弱いので注意が必要です。
なお犬と猫を比較すると、実は猫の方が寒さに強い傾向が見られます。特に日本でよく見かける日本猫(雑種)は、その多くがダブルコートなので、比較的寒さには耐性があると考えられています。
具体的に寒さに弱い犬種・猫種を挙げると、下記になります。
<寒さに弱い犬種>
チワワ、プードル、パピヨン、イタリアン・グレーハウンド、ボストンテリア、ミニチュア・ピンシャー等
<寒さに弱い猫種>
ベンガル、シャム、スフィンクス等
寒さに弱い犬を守るには
ワンちゃんが普段過ごす室内は、エアコンや加湿器を活用して、常にワンちゃんにとって快適な温度と湿度を維持できるようにコントロールしてあげましょう。ワンちゃんにとって快適な温度は20℃程度、湿度は40〜60%程度です。
ワンちゃんにとっての適温は、人の適温よりも低いので注意が必要です。人に快適な室温でも、そのまま留守にしてしまうと、窓から差し込む日差し等でかえって熱中症になってしまうこともあるため、必ず日の当たらない涼しい場所も逃げ場所として確保しておく必要があります。
また、ワンちゃんには毎日のお散歩が欠かせません。寒くて外に出たがらない子も、悪天候で外に出られない場合を除き、散歩に連れ出しましょう。運動不足は肥満を招き、肥満は万病を招くからです。この時に注意していただきたいのが、急激な温度差をできるだけなくすことです。日中などのできるだけ暖かい時間帯を選び、寒い廊下や玄関などでしばらく過ごして寒さに慣らしてから外に出ましょう。また真冬のお散歩には、防寒着や防寒ブーツの着用も有効です。
寝床やよくいる場所にはペット用のヒーターやブランケット、厚手のクッションなどを置いておくのも効果的です。寒い時には利用し、暑くなったら別の場所に避難できる状況を作ることが大切です。
寒さに弱い猫を守るには
猫ちゃんも、普段過ごしている室内の温度と湿度を適切にコントロールしてあげることが大切です。猫ちゃんにとって快適な室温は、ワンちゃんよりも高くて25℃程度です。湿度は、50〜60%に維持しましょう。スフィンクスなどの無毛種の場合は、必要に応じて室内でも防寒着を着せると良いでしょう。
犬よりも高い気温を好むにもかかわらず、猫の方が寒さに強いといわれている理由の一つに、猫は自由に動けるからということがあります。温かい空気は上の方に集まります。猫たちは棚の上などの温かい空気が集まっている場所や、冷蔵庫の上などの暖かい家電の上などにも上がれるなど、自力で暖かい場所に移動できる点が強みです。
ただし、猫ちゃんの行動範囲の中にも暖かい場所と涼しい場所を用意しておき、自分の意思で自由に行き来できるようにしておきましょう。また、明け方急激に気温が下がっても暖をとれるよう、寝床やお気に入りの場所にペット用ヒーター、ブランケット、厚手のクッションなどを置いておくことも忘れないでください。
以前ブログでご紹介した、下記の記事も参考にしてみてください。
ポイント
ポイント
・冬の寒さと乾燥した空気は、犬や猫をさまざまな病気にかかりやすくさせます。
・寒さに弱い犬や猫に共通している特徴は下記の通りです。
≫体が小さい
≫筋肉が少ない
≫脂肪が少ない
≫シングルコートの被毛
・犬を寒さから守るためにできることは下記の通りです。
≫室温を20℃程度、湿度を40〜60%程度に維持する
≫暖かい場所だけではなく、涼しい場所も作っておく
≫悪天候等の理由がない限り、寒くても散歩に行く
≫廊下や玄関などで寒さに慣らしてから外に出る
≫散歩時間はできるだけ暖かい時間帯にする
≫適宜防寒着や防寒ブーツを着用させる
≫寝床などでは防寒グッズを活用する
・猫を寒さから守るためにできることは下記の通りです。
≫室温を25℃程度、湿度を50〜60%程度に維持する
≫自由に移動できる範囲内に暖かい場所と涼しい場所を確保する
≫無毛種には室内でも必要に応じて防寒着を着せる
≫寝床などでは防寒グッズを活用する