実践!ご家庭でできる犬猫の健康管理〜飼い主様の違和感が大切!

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長生きならそれで良い?

仲睦まじい様子の犬と猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

人もワンちゃんや猫ちゃんも、平均寿命が徐々に伸びてきています。これは喜ばしいことです。一方で、健康な状態を維持することの大変さにも注目が集まるようになりました。身体に不調を抱えたまま長生きすることは、決して幸せなこととはいえないからです。

 

ワンちゃんや猫ちゃんは、自分から「具合が悪い」とは教えてくれません。それどころか、具合が悪くても隠そうとしてしまいます。病気やケガをそのまま放置してしまうと、悪化して治りづらくなることがほとんどです。ワンちゃんや猫ちゃんにできるだけ負担をかけずに治療するためには、早く気付いて治療を始めることが大切です。

 

彼らの体調不良や不快感にいち早く気付けるのは、飼い主様だけです。飼い主様が感じる「違和感」が、彼らの健康を維持する強い助けになるのです。しかし、病気やケガのプロではないため、ご自身の違和感に自信を持って「おかしい」と言える飼い主様は、少ないのが現実です。

 

飼い主様が自信を持って「愛犬や愛猫の様子がおかしい」と思えるための土台を作るのが、ご家庭で日頃から行う健康管理です。日頃から行なっていただきたい、ご家庭での健康管理についてお話しします。

 

健康管理の4本柱

獣医師と犬と猫

 

まず、ワンちゃんや猫ちゃんのための健康管理について、全体像をまとめておきましょう。

 

健康管理は、次の4本柱で成り立ちます。

・避妊・去勢手術

・ワクチン接種と寄生虫駆除

・ご家庭での健康管理

・定期的な健康診断

 

愛犬や愛猫に繁殖させる予定がない場合は、最初の発情が訪れる前を目安に、避妊・去勢手術をすることをおすすめします。手術をすることで、発情期のたびに訪れる、さまざまなストレスを取り除いてあげられ、生殖器系の病気の予防にもなるからです。

 

動物病院と上手に付き合うのも、健康管理の秘訣です。狂犬病や混合ワクチンの接種、ノミやダニ、フィラリアの予防をきちんと行えば、予防可能な感染症やアレルギーから守れます。また定期的に健康診断を受けることで、ご家庭では見つけづらい病気も早く見つけられます。

 

これだけのことを実行しても、病気やケガから完全に守ることはできません。一度も病気にかからずケガもせずに一生を終えるのは、本当に稀なケースです。だからこそ、ご家庭で日頃からワンちゃんや猫ちゃんの健康管理を行なっていただき、少しでも不調の兆しが見えたら、動物病院に連れて来ていただきたいのです。

 

ご家庭でできる健康管理

犬をブラッシングする飼い主

 

◯毎日の観察が大切!

ご家庭で毎日できることは、観察です。そして、これは飼い主様にしかできないことです。健康に過ごしている毎日の様子をしっかりと把握しているからこそ、ちょっとした変化や異変に気付けるのです。最初は気構えてしまうかもしれませんが、すぐに慣れて習慣化されるでしょう。

 

観察する際の着目点は下記です。

①しぐさや行動

②表情や鳴き方

③全身状態(毛艶や皮膚の状態と痛みの有無など)

④食欲

⑤排泄物

 

①と②は、遊んでいる時や寝ている時などの普段の様子の観察です。気になることがあれば、メモに残しておきましょう。また、食事中や排泄時の様子も邪魔をしない程度に観察してください。

 

③については、毎日のブラッシングの時間を活用しましょう。全身をくまなく観察し、触って確認してください。口中、耳、目、足先、爪などのチェックも忘れずに行いましょう。

 

④と⑤は、変化がなくても記録しておきましょう。④の食欲は、給仕量から残した量を引けば簡単に算出できます。飲水量も同じように算出できます。⑤の排泄物については、回数や量の他、色やニオイを見てください。便の場合は、硬さも大切です。おしっこの染み込んだペットシーツの重さから使用前のシーツの重さを引けば、尿量も簡単に測れます。

 

◯基礎的な生理データの計測

できれば、基礎的な生理データの測定を定期的に行うことをおすすめします。ワンちゃんや猫ちゃんは、動物病院に来るととても緊張してしまうため、正常な数値を測れないことが多いのです。ご自宅でリラックスした状態で計測することが、いざという時に役に立ちます。計測頻度は、2週間に1回程度でかまいません。計測する内容や方法は、次章で説明します。

 

◯記録し続けることが大切

日記帳を購入し、専用の記録帳にすると良いでしょう。動物病院に持参すれば、正確にワンちゃんや猫ちゃんの様子を伝えられますし、ご自身が感じた違和感を確認する際にも役立つはずです。

 

また数値を記録しておくと、体重や食欲、飲水量、排泄回数や量の増減などを、正しく把握できます。食欲があるのに体重が減っているなど、気付きづらいケースにも気付けるようになります。

 

◯積極的な勉強も!

飼い主様には、犬や猫の習性や基本的な病気の症状などを知っておいていただきたいと思います。知らなければ見落としてしまう、大切な変化もあるからです。以前ご紹介したペットについて学ぶ機会のブログなども参考にしていただき、ぜひ飼い主様のスタイルに合った、無理のない勉強方法を見つけてみてください。

<飼い主様がペットについて学ぶ機会について>へのリンク

 

基礎的な生理データの測定

子猫の体重測定

 

以下の4つについては、できれば数値で把握しておきたい基礎となる生理データです。ご家庭でリラックスしている時に測定してください。

①体重

②心拍数

③呼吸数

④体温

 

①の体重は、飼い主様が抱いて体重計に乗り、そこから飼い主様の体重を引くと良いです。抱かれるのが苦手な子の場合は、クレートなどに入れて体重計に乗せるのも良いでしょう。

 

②の心拍数は、大型犬の場合60〜80回/分、小型犬の場合80〜120回/分、猫の場合130〜160回/分が目安です。胸元に手を当てて、15秒間測って4倍しましょう。

 

③の呼吸数は、胸やお腹の動きで測ります。「吸って吐いて」のセットで1回とカウントします。どんな子でも、大体20〜30回/分が目安です。これも15秒間測って4倍しましょう。

 

④の体温は、ペット用の体温計で直腸温を測るのが理想で、平熱は38〜39℃程度です。測定が難しければ、後ろ足の付け根辺りの温かさを手のひらの感覚として覚えておきましょう。数値では測れませんが、発熱しているかどうかの判断には役立ちます。

 

多少目安の範囲から外れていても、それがその子にとっての正常値の場合もあります。他に気になる症状が見られない場合は、慌てる必要はありません。もちろん、心配な場合はかかりつけの動物病院に相談してください。

 

ポイント

猫に給仕する飼い主

 

ポイント

・いち早く愛犬愛猫の異変に気付くためには、ご家庭での健康管理が大切です

・観察ポイントは、しぐさ、表情や鳴き方、全身状態、食欲、排泄物の5点です

・数値で把握したいのは、体重、心拍数、呼吸数、体温の4点です

・体温の計測が難しい場合は、後ろ足付け根の体感温度を覚えておくだけでも役に立ちます

・愛犬愛猫の様子に違和感を覚えたら、迷わずかかりつけの動物病院に連れて来てください

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