花粉飛散ピークシーズンの到来で気をつけたい犬猫の花粉症とケア
犬や猫にもある花粉症
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
早いもので、今年もまた花粉がたくさん飛散する春がやってきました。横須賀地域を含む関東の花粉カレンダーでは、スギの花粉ピークが2月下旬から4月上旬、ヒノキの花粉ピークが3月下旬から4月中旬となっています。
その後も、イネ科の花粉ピークは5月から6月上旬、ブタクサの花粉ピークは9月と続いていきます。飛散量の多少を問わなければ、関東では1年を通してなんらかの花粉が常に飛散しています。
特定の花粉により発症する花粉症は、現代人の多くが悩まされているアレルギー性の疾患です。実は、ワンちゃんや猫ちゃんも花粉症を発症します。ただ、人に現れる症状とは異なるため、ワンちゃん猫ちゃんの花粉症に気付いていない飼い主様もいらっしゃるようです。
今回は、ワンちゃんや猫ちゃんの花粉症の違いや、ケアのポイントについてお話しします。
人とは異なる犬猫の症状
花粉症で悩まれている飼い主様も多いと思います。人の場合、花粉症の主な症状は目の痒みや鼻水・鼻詰まり・くしゃみ等です。これは、花粉が体内に侵入する入り口となっている目や鼻、喉の粘膜に症状が現れているからです。
命に関わる訳でもなく寝込んでしまう程重症になることはなくても、耐え難い痒みや息苦しさが続いて集中力が途切れてしまい、仕事や勉強の効率がガクッと低下してしまうほどの辛さです。
ワンちゃんや猫ちゃんも、花粉が侵入する経路は私たちと同じです。しかし現れる症状は、ワンちゃん、猫ちゃん共にそれぞれの特徴が見られます。個別に見ていきましょう。
◯犬の花粉症
ワンちゃんの場合、花粉症の症状は目、鼻、くしゃみなどの気管支系にはあまり現れず、アトピー性皮膚炎という形で現れることがほとんどです。アトピー性皮膚炎は体の左右対称に現れるのが特徴で、皮膚の薄い部分や皮膚同士が重なり合っている部分(顔、耳、首の内側、脇、股、足先)やお腹が赤く腫れ、激しい痒みが続きます。
また、炎症が耳の穴から鼓膜までの「外耳」に現れる場合もあり、その場合はアトピー性外耳炎と診断します。この場合も、外耳に激しい痒みが続きます。
◯猫の花粉症
猫ちゃんの場合は、アレルギー性鼻炎やアレルギー性気管支炎といった、くしゃみ、鼻水の症状が多く見られます。加えて、目の痒み、腫れ、充血、涙や目やにが出るアトピー性結膜炎や、ワンちゃんと同じアトピー性皮膚炎も現れるケースが多いです。
◯花粉症を疑う場合のポイント
花粉症はアレルギー性の疾患です。ただし、発症の引き金となる原因物質(アレルゲン)が花粉である点に大きな特徴があります。花粉なら全てに反応するという訳ではないため、スギやヒノキに反応する場合、ブタクサに反応する場合など、アレルゲンとなる花粉によって「季節性」が見られることが大きな特徴です。
毎年同じような時期になると、痒がったり鼻水が出たりくしゃみが出たりするなど、発症時期と季節に関連性が見られる場合は強く花粉症が疑われます。
動物病院で診察を受ける際は、飼い主様が気付いた「季節性」についてもぜひお話していただけると助かります。
花粉最盛期の目耳等のケア
◯目のケア
アトピー性結膜炎の症状が見られた場合は、こまめに目を拭いてあげましょう。
デリケートな部分なので、乾いたタオルなどでゴシゴシと拭くのではなく、清潔なガーゼをぬるま湯などで濡らして優しく拭いてください。市販されている猫ちゃんの涙やけ用のケアシートなどを利用するのも良いでしょう。
また動物病院でアレルギー用の点眼剤(目薬)を処方された場合は、獣医師の指示に従ってご自宅でさしてあげてください。
初めてだと上手にさせるかどうか心配だという飼い主様もいらっしゃいます。診察時に、見本をお見せしながら丁寧にさし方をご説明しますので、心配な場合は遠慮なくおっしゃってください。
◯耳のケア
花粉がたくさん飛散している時期は、お散歩から帰った後に、ワンちゃんの耳介(頭から飛び出している耳の部分)の内側を優しく拭くことで、花粉が耳の中に入るのを防いであげると良いでしょう。
この場合も、乾いたタオルでゴシゴシと拭くのではなく、清潔なコットンなどで優しく拭いてあげてください。ただし、耳の穴の中を綿棒などで拭くのは、逆効果になるのでやめてください。
すでにワンちゃんが耳をしきりに痒がっている場合は、できるだけ早く動物病院に連れて来てください。
◯皮膚のケア
ブラッシングには花粉を取り除く効果もありますので、特に散歩から帰宅した後のワンちゃんには丁寧なブラッシングを行なってあげましょう。
また、実際にアトピー性皮膚炎の症状が出てしまっている場合には、患部を掻きむしらないようにするためにも、洋服を着用させることも検討してください。
ワンちゃん用や猫ちゃん用に、術後服、ロンパース、皮膚保護服、カバーオールなどの名称で、全身を覆えるつなぎ状の洋服が市販されています。伸縮性があり、着心地や動きやすさも考慮されていて、お腹も含めて過剰なグルーミングや掻きむしりから保護できます。
◯室内環境のケア
花粉は、外に出たワンちゃんや猫ちゃんの体に付くだけではありません。飼い主様の洋服やカバンなどに付いて室内に持ち込まれたり、換気などで室内に入り込んだりもします。
そのため、こまめに掃除機やモップ掛け、雑巾掛けなどで床の上や棚の上など、ワンちゃんや猫ちゃんが生活している場所の清掃を心掛けてください。また、空気清浄機の利用も効果を期待できるでしょう。
犬の花粉症での注意事項
特に花粉症のワンちゃんの場合に注意していただきたいことがあります。1つは花粉症シーズンの散歩への対処、もう1つは口腔アレルギー症候群の予防です。
◯花粉症シーズンのワンちゃんの散歩について
花粉の飛散量は、時間帯によっても変化します。特に多くなる時間帯は、14時頃までのお昼時と、18〜19時頃の夕方なので、この時間帯の散歩はできるだけ避けましょう。
また、散歩中は防護服を着用し、帰宅後は服を脱がせて花粉を払い落とした後に室内に入るようにすると、花粉の室内への持ち込みを防げます。
◯口腔アレルギー症候群の予防について
アレルギーには交差反応といって、アレルゲンとよく似た構造の別の物に対してアレルギー症状が起きてしまうということがあります。ヒノキ花粉に対する抗体を持っていなくても、スギ花粉への抗体を持っているとヒノキ花粉にもアレルギー反応を起こしてしまうことがあるのも、交差反応の一例です。
ワンちゃんの交差反応として、スギ花粉症のワンちゃんが果物や野菜を食べると、口腔アレルギー症候群を発症しやすいという報告があります。具体的な食材としては、りんご、梨、桃、スイカ、オレンジ、にんじん、きゅうり、ナスなどが挙げられます。
スギ花粉症のワンちゃんに食事を手作りされている飼い主様は、食材選びに注意をしてあげてください。
なお、以前のブログでもワンちゃんや猫ちゃんの花粉症について詳しくお話ししていますので、併せてお読みください。
ポイント
・犬や猫も花粉症にかかります
・犬や猫の花粉症の症状は人の症状とは異なる部分が多いです
・犬の花粉症は皮膚炎と外耳炎が主たる症状です
・猫の花粉症は鼻・気管支炎の症状に皮膚炎の症状が加わることが多いです
・花粉症シーズンは、目・耳・皮膚のケアに配慮しましょう
・花粉を室内に持ち込まないように配慮しましょう
・ワンちゃんの散歩は花粉の飛散量が少ない時間帯を選びましょう
・スギ花粉症のワンちゃんの場合、果物や野菜の交差反応に注意しましょう
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