春になり食欲が落ちてしまった愛犬・愛猫への対策について
食欲不振になりやすい春
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
「春眠暁を覚えず」という言葉がありますが、それくらい寝心地が良いはずなのに、昼間もついうとうとしてしまいがちなのが春です。このように、私たちも調子を崩しやすくなる春ですが、ワンちゃんや猫ちゃんも、春になると食欲がなくなるなどの体調の変化が見られやすくなります。
今回は、春になるとよく見られるワンちゃんや猫ちゃんの食欲不振について、その原因や対策を中心にお話しします。
食欲不振になる原因
◯激しい寒暖差
日本では、春になると低気圧と高気圧が交互に到来します。低気圧が来ると寒くなり、その後高気圧がきて暖かくなるということを繰り返すため、三寒四温と呼ばれることもあります。
動物の体は、暖かくなると副交感神経が活発化し、寒くなると交感神経が活発化します。そのため、三寒四温が繰り返されると自律神経が乱れてしまいます。このことが原因で、食欲が落ちてしまうことがあります。
◯換毛期
ワンちゃんや猫ちゃんの全身を覆っている被毛は、春になると冬毛から夏毛に切り替えられるために、普段以上に多くの毛が抜けます。換毛期です。
特に猫ちゃんは頻繁にセルフグルーミングを行うため、抜け毛を飲み込んで胃の中でヘアボールと呼ばれる毛球を作ってしまうことがあり、それが原因で食欲が落ちてしまうことがあります。
◯アレルゲンの増加
関東地方では、1年を通してさまざまな花粉が飛散しています。特に春は、スギ、ヒノキやイネ科植物の花粉がピークを迎えます。これらの花粉にアレルギーを示すワンちゃんや猫ちゃんの場合、皮膚に痒みが生じたり、気管支や結膜などに炎症を起こしたりして、それが大きなストレスになることがあります。また春先から活発に活動を始めるノミやダニもアレルゲンです。
このように、春先にはワンちゃんや猫ちゃんにとってもアレルゲンが増えるため、アレルギー症状によるストレスで、食欲を落としてしまうことがあります。
◯代謝量の変化
寒い時期は体に脂肪を蓄え、暖かくなると脂肪を燃焼させるなど、体は無意識のうちに気温の変化に対応し、その際に代謝に変化が起きやすくなります。この代謝の変化が影響して、食欲が落ちることがあります。
◯飼い主様の生活の変化
日本では、4月から年度をスタートする学校や会社が多いため、4月になると生活が変化することが多いです。そのため、4月は引っ越しをしたり、一部のご家族が家を出られたり、生活時間が変わったりといった変化が起こりやすい時期です。
実は、こういった変化はワンちゃんや猫ちゃんの大きなストレスにつながりやすいです。強制的に縄張りを変えられたり、大好きなご家族がいなくなったり、慣れ親しんできた生活スタイルが変わったりすることで、食欲が落ちてしまうこともあるのです。
春の犬猫への食欲対策
◯温度管理
まずは、ワンちゃんや猫ちゃんが暮らしている室内の温度と湿度をできるだけ一定にするように管理し、寒暖差を最小限に抑えてあげましょう。人と犬と猫とでは、快適に過ごせる温度が異なりますが、湿度を50%前後に維持できれば、多少温度がワンちゃんや猫ちゃんの快適な範囲から外れても、大きなダメージにはなりませんので、特に湿度管理に配慮すると良いでしょう。
◯ブラッシング
換毛期は、それまで以上にこまめなブラッシングを行い、抜け毛が被毛に絡まらないように気をつけましょう。特に猫ちゃんの場合は、短毛種でもこまめなブラッシングを欠かさないようにして、毛球症を予防しましょう。
◯アレルゲンの除去
外出時はワンちゃんにも洋服を着せる、帰宅前にワンちゃんや飼い主さんの服をはたいたり全身を綺麗に拭き取ったりして、アレルゲンの室内への持ち込みを防ぎましょう。その上で、こまめに掃除機をかけたり空気清浄機を利用したりして、室内の衛生状態を管理しましょう。
◯適度に運動させる
犬種特性やその子の性格なども十分に把握した上で、散歩や室内でのゲームなどで適度な運動量を確保してあげましょう。しっかり運動することで、免疫力の向上や自律神経の正常化、筋力アップによる代謝力の向上など、その子にとっての健康な状態を維持できるようになります。
運動は、猫ちゃんにも必要です。キャットタワーを設置するなどの工夫により、空間を立体的に利用できるようにしてあげましょう。
◯ストレス管理
全くストレスのない環境を作ることは不可能ですが、変化が生じた時に、ストレスを和らげるような工夫をすることは可能です。
ワンちゃんや猫ちゃん自身のニオイがついているブランケットや独立されたお子様のニオイがついているシャツなどを、新しい環境の中に置いて安心できるようにすると良いでしょう。
また生活に早く慣れるよう、できるだけ規則正しい生活を送り、必ず散歩や一緒に遊ぶ時間を作ることで、しっかりと信頼関係を結びましょう。猫ちゃんも、短時間で構いませんので、一緒に遊ぶ時間を必ず作ってあげましょう。
こんなことにもご注意を!
◯食欲をそそる食事の工夫
食欲が落ちた場合、まずはワンちゃんや猫ちゃんの食欲をそそるように工夫をしてみましょう。ワンちゃんや猫ちゃんは、視覚よりも嗅覚で食欲を刺激されます。ドライフードであればぬるま湯で少しふやかす、ウェットフードなら電子レンジで少し温めてあげると、ニオイが引き立ち食べる気になってくれることがあります。
また、フードはできるだけ小分けに包装されたものを選び、鮮度の高い状態であげられるようにしたり、大好物を少しだけトッピングしてあげたりといったことも、食欲回復の効果を期待できるかもしれません。
◯野良猫が多い地域の場合
横須賀市動物愛護センターが地域猫活動に力を入れるようになってから、横須賀地区では外で生まれる子猫の数もぐんと減りました。T N R活動により、避妊・去勢手術された猫たちが増えたため、野良猫の発情期に悩まされる室内飼育の猫たちも減ってきています。
しかし、まだこういった活動の成果が現れていない地域では、避妊・去勢されていない野良猫が多く残っていて、室内で暮らしている猫たちの心をざわつかせているかもしれません。そのような場合は、窓を閉め、雨戸やカーテンなども利用して、できるだけ外からの音やニオイなどをシャットアウトできるようにしてあげてください。
◯食欲が戻らない場合
食欲が落ちてから2日以上経っても元に戻らない場合や、嘔吐や下痢、体重減少などの他の症状も見られる場合は、できるだけ早くかかりつけの動物病院にご相談ください。
特に子犬や子猫は、低血糖を起こして危険な状態になる可能性もあります。「たかが食欲不振」などと考えず、裏に病気が潜んでいる可能性も考えてあげてください。
ポイント
・春は、さまざまな要因で犬猫の食欲が落ちることのある季節です。
・犬猫の食欲が落ちる主な原因は下記の通りです。
>激しい寒暖差
>換毛期
>アレルゲンの増加
>代謝量の変化
>飼い主様の生活の変化
・できるだけ原因となる変化を和らげることで食欲不振の対策をしましょう。
・食欲をそそる工夫や、裏に潜んでいる病気の可能性も忘れないでください。
カテゴリー