犬に多い熱中症は予防が肝心!症状や応急処置まで詳しく解説

ペットの健康としつけ

犬の熱中症は予防が大切!

炎天下で荒い息遣いの犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

今年もまた、暑い夏がやってきました。以前のブログでもご紹介した通り、ワンちゃんや猫ちゃんは、全身から汗を流して体温調節することができません。そのためワンちゃんや猫ちゃんは、人と比べて熱中症になりやすいという一面を持っています。熱中症は、重症化すると後遺症が残ったり、最悪の場合は命を落としたりすることもある、怖い病気です。基本は、日頃から予防策を行っておくことです。何よりも、熱中症にさせないことが大切なのです。

 

暑くなると、猫ちゃんはセルフグルーミングで全身を舐めて唾液を蒸発させたり、高い場所も含めて家の中で最も涼しい場所を探したりして、体温を上げないようにします。ワンちゃんは、主に口を開けて舌を出し、ハァハァと荒い息遣い(パンティング)をして口内の粘膜から水分を蒸発させて体温を下げます。

 

猫ちゃんもワンちゃんも、どちらも人と比べると体温を下げる効率が悪いのですが、実際に熱中症で来院されるのは、猫ちゃんよりもワンちゃんの方が、圧倒的に多いです。猫ちゃんの祖先のリビアヤマネコは、北アフリカや中近東の砂漠地帯に生息していたため比較的暑さに強く、多くがヨーロッパ出身のワンちゃんには、高温多湿の日本の夏はきついからでしょう。

 

そこで今回は、ワンちゃんの熱中症について、予防法、症状、応急処置を詳しくお話ししようと思います。

 

犬の熱中症の予防法

散歩中に水を飲む犬

 

熱中症は、高温多湿な環境に長くいることで起こります。体の深部から常軌を逸するほど体温が上がり、さらに脱水症状も起こすことで、全身のさまざまな機能が障害を起こす病気です。

 

外気温が高くなればなるほど、そこにいるワンちゃんの体温も上がります。そのため、ワンちゃんが過ごす環境は、ワンちゃんにとって快適であることが大切なのです。

 

ワンちゃんが快適に過ごせる環境は、人が快適だと感じる環境よりもかなり涼しいです。当院では、ワンちゃんの入院室の温度は、基本的に20℃になるように設定しています。

 

また、ワンちゃんはパンティングで体温を下げようとします。なぜパンティングで体温を下げられるのかというと、口の中の水分が蒸発する際に、気化熱といって周囲の熱を奪う仕組みがあるからです。

 

しかし、湿度が高いとパンティングも効果的に水分を蒸散できません。そのため、ワンちゃんが過ごす環境の湿度は、50%前後にしてあげる必要があります。健康なワンちゃんであれば、気温が20℃を多少超えていても湿度50%前後を維持できていれば、体温を下げることができます。熱中症予防には、湿度管理もとても大切だということを覚えておいてください。

 

なお、肥満気味のワンちゃんや高齢のワンちゃんは、特に気をつけてあげましょう。肥満気味の子は皮下脂肪が多いため、体温を下げるのがさらに不得意です。また高齢のワンちゃんも、身体能力の低下で熱中症リスクが高くなります。

 

基本的な熱中症の予防策は、ワンちゃんが過ごす環境を気温20℃、湿度50%前後に維持することです。飼い主様の肌感覚ではなく、きちんと温度計や湿度計を使って管理することをおすすめします。肌寒いと感じた場合は、1枚羽織る等の工夫で、ワンちゃんに合わせてあげましょう。もちろん、留守番中も同様です。基本はエアコンをつけたままにしておきましょう。万が一の停電に備えて、電気を使わない犬用の冷却グッズも併用してください。

 

ワンちゃんの場合は、夏でも外に出る機会が多いです。その際の予防策としては、下記を意識するようにしてください。

 

・日中の暑い時間帯には運動や興奮をさせない(運動・興奮で体温が上昇します)

・お散歩は日が翳り、地面の温度が下がった早朝や夜間に行う

・熱帯夜のお散歩は、短縮コース、冷却グッズの利用や、室内運動で代替えする

・乗車前にエアコンで車内の温度を下げておく

・ごく短時間でも、車内にワンちゃんを置き去りにしない

・夏のアウトドアは、できるだけ避暑地を利用する

・外出時にも、こまめに水分を補給させる

 

犬の熱中症の症状

ぐったりしている犬

 

○犬の熱中症|初期の症状

・運動もしていないのにいつもより早いパンティングをしている

・よだれを流している

・歯茎や舌、結膜などの粘膜が充血(赤くなる)またはうっ血(暗青色になる)する

・いつもより脈が早い

 

○犬の熱中症|重症期の症状

・嘔吐や下痢をしている

・全身を小刻みに震わせている

・けいれん発作を起こす

・呼吸困難に陥っている

・ぐったりとして意識がない(虚脱)

 

犬の熱中症の応急処置

濡れタオルで首を冷やす犬

 

熱中症の原因は体温の過度な上昇なので、熱中症の症状が見られた場合は、とにかくワンちゃんの体温を下げることが最優先です。発症した場所にもよりますが、身近なものを活用して効率よく体温を下げてあげましょう。具体例をいくつか紹介しますので、参考になさってください。

 

○保冷剤または氷嚢(袋に氷を入れて縛ったもの)を用意できる場合

①ワンちゃんを涼しくて安全な場所に連れて行き、横にします。

②保冷剤または氷嚢を、太い血管が通っている場所に当てて体を冷やします。

 太い血管が通っている場所は、下記の通りです。

  <のど、首筋、脇の下、お腹、内腿>

 また、脳の温度上昇による脳障害を防ぐために、必ず頭も冷やしてください。

③飲めるようなら、適宜水を飲ませましょう。

 

○水を用意できる場合

①ワンちゃんを涼しくて安全な場所に連れて行き、横にします。

②ワンちゃんの体に水をかけます。

③うちわなどを使って濡らした体をあおぎ、かけた水を蒸散させます。

 水で濡らしたタオルで体を包み、その上からあおぐのも効果的です。

④飲めるようなら、適宜水を飲ませましょう。

 

○応急処置時の注意事項

・冷たい氷水を体にかけないこと

 皮膚の表面に流れている末梢血管が収縮して、逆に体温を下げづらくします。

・冷やしすぎないこと

 冷えすぎて低体温症になるのを防ぐため、通常は直腸温が39.5℃程度でやめます。

 飼い主様が直腸温を測るのは難しいと思います。

 日頃からワンちゃんの内腿などを触り、普段の温度感を知っておきましょう。

 

○応急処置が済んだらまずは動物病院に連れてきてください

熱中症は、自然に回復したように見えても数日後に体調を崩したり、後遺症が残ったりすることもある怖い病気です。応急処置をして落ち着いたと感じても、安心せずに動物病院に連れてきてください。その際、連れてくる間もできるだけワンちゃんの体を冷やしながらくるようにしてください。

 

ポイント

日陰で休む犬

 

・犬も猫も、人と比べると体温調整が苦手です。

・熱中症で来院するのは、圧倒的に犬が多いのが現実です。

・熱中症は、後遺症が残ったり命を落としたりすることもある、怖い病気です。

・愛犬の熱中症は、飼い主様の工夫で予防できます。

・できるだけ早い段階で、異変に気付いてあげましょう。

・愛犬に熱中症の症状が見られたら、体を冷やすことを最優先してください。

・体を冷やしたら、症状が落ち着いても安心せずに診察を受けてください。

 

とにかく、熱中症は予防が肝心です。日頃から、ワンちゃんの快適な環境を作ること、水分補給を忘れないことを心がけて、蒸し暑い夏を乗り切りましょう!

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