愛犬愛猫が換毛期を迎える秋に向けてのグルーミングと掃除のコツ

ペットの健康としつけ

皮膚と被毛の役割

犬の被毛の質感

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

地球が誕生してからわずか5〜6億年後には、原始的な生命が誕生していました。しかし、それがどのようなものだったのかについては、解明されていません。現在主流となっている説では、最初の生命体は「水中」にいたであろうとされています。

 

なぜこんな話をしたかというと、皮膚は水中で生活していた生物が陸上に上がるために手に入れたものだからです。生活の場を水中から陸上に移すために、動物たちは水中では必要のなかった「紫外線・重力・乾燥などへの適応手段」として、皮膚、特にバリア機能に優れた角質層(表皮)を手に入れたのです。

 

その表皮を覆っているのが、被毛です。被毛は、表皮の皮膚バリア機能を助け、かつ体温調節や毛包内にある感覚受容器への感覚伝達、動物同士のコミュニケーション・ツールなどとしても機能しています。今日は、このワンちゃんや猫ちゃんの被毛についてお話をしたいと思います。

 

犬猫の被毛の構造と毛周期

毛周期

 

ワンちゃんや猫ちゃん自身の寿命は長いですが、その体を構成している細胞や毛にも寿命があり、短いサイクルで生まれ変わっています。毛の寿命は毛周期と呼ばれ、一定の期間を経ると毛の成長は止まり、新しい毛が生えて古い毛は抜け落ちます。毛が長いほど成長に時間がかかるため、長毛種よりも短毛種の方が、毛周期は短くなります。

 

また被毛の構造には2種類が存在します。1つは、オーバーコートまたは上毛と呼ばれる太くて硬い毛を1層だけ持っているシングルコートです。もう1つは、オーバーコートの下にアンダーコートまたは下毛と呼ばれるふわふわとした細くて柔らかい毛が密に生えた2層の被毛を持つダブルコートです。

 

オーバーコートは、主に皮膚を外敵や刺激、衝撃などから守る役目を担っています。アンダーコートは、主に保温効果による体温調節の役割を担っています。私たちが季節によって衣替えをするように、ダブルコートのワンちゃんや猫ちゃんも、季節によってアンダーコートを交換します。そのため、季節の変わり目となる春頃(5〜7月頃)と秋頃(9〜11月頃)に、ダブルコートの子たちはいつもより大量の抜け毛を発生させてアンダーコートが生え替わります。この期間を、換毛期と呼びます。

 

換毛期の引き金になるのは、日照時間と気温の変化だと考えられています。そのためダブルコートのワンちゃんや猫ちゃんでも、1年を通して人工的に照明や室温が管理されている室内で暮らしている場合は、換毛期になっても抜け毛の量が変わらない子も増えてきているようです。以下にダブルコートの主な犬種と猫種を挙げますので、参考にしてください。

 

<ダブルコートの犬種>

(1) 長毛種

ゴールデンレトリーバー、シェットランドシープドッグ、スピッツ、ポメラニアン、チワワ、キャバリア等

(2) 短毛種

柴犬、秋田犬、ウェルシュコーギー、シベリアンハスキー、ラブラドールレトリーバー、ジャーマンシェパード、ジャックラッセルテリア等

 

<ダブルコートの猫種>

(1) 長毛種

ソマリ、ペルシャ、ヒマラヤン、ノルウェージャンフォレストキャット等

(2) 短毛種

アメリカン・ショートヘア、アビシニアン、ロシアンブルー等

※いわゆる日本猫と呼ばれている猫(雑種)には、長毛種、短毛種いずれの場合もダブルコートが多いと言われています

 

換毛期グルーミングのコツ

猫のブラッシング

 

換毛期になったら、普段以上にこまめにブラッシングを行うことが大切です。ブラッシングで被毛についた抜け毛を取り除き、空中に舞ったり床に落ちたりする抜け毛や、セルフグルーミングで飲み込んでしまう抜け毛の量を減らすのです。

 

ブラッシングの際には、ブラシの掛け方とツールの選び方に注意しましょう。また、換毛期はすぐにブラシに毛が溜まりますので、適宜取り除きながら進めましょう。

 

<ブラッシングのコツ>

Step.1:抜け毛をとる

§長毛種の場合

・ピンブラシで毛並みに沿って全身をとかします。

・次に毛の根元から逆立てるようにして、抜け毛や汚れを取り除きます。

・毛玉ができやすい部分はスリッカーブラシで毛玉を引っ掛けるように解きほぐします。

・スリッカーブラシを強く当てすぎると傷つけることがあるので、軽く当てましょう。

§短毛種の場合

・ラバーブラシまたはピンブラシで毛並みに沿って全身をとかします。

・次に毛の根元から逆立てるようにして、抜け毛や汚れを取り除きます。

 

Step.2:とかし残しを確認しながら毛並みを整える

・毛並みに沿ってコームをかけながら全身の毛を整えます。

・毛を整えながら、とかし残し(毛のもつれ)が残っていないことを確認します。

 

<使用するツールの選び方>

長毛種の場合、Step.1で毛をとかす際には、ピン先が丸くなっているピンブラシやピン先がくの字型に曲がっているスリッカーブラシが向いています。場所によって使い分けましょう。

短毛種の場合は、ピンブラシの他に、ゴム製のラバーブラシも向いています。

いずれの場合も、最後に毛の流れを整える際には、コーム(櫛)を使用します。

ブラシを嫌がるワンちゃん、猫ちゃんでは、ミトンタイプ(手袋型のラバーブラシ)だと受け入れてくれる場合もあるので、試してみても良いでしょう。

 

<長毛種の猫の場合>

ワンちゃんとは異なり、猫ちゃんはあまりシャンプーを行う必要がありません。しかし長毛種の場合は、抜け毛を取り除くために換毛期にシャンプーを行うことも効果的です。必要に応じて、無理のない範囲で十分です。ただし皮膚に疾患がある場合は事前にご相談ください。

 

掃除もグルーミングの一環

抜け毛が絡んだソファ

 

動物の毛にはダニなどの虫が集まりやすく、抜け毛がアレルゲンとなることも多いです。換毛期に入ったら、ブラッシング同様に室内のお掃除も普段よりこまめに行い、衛生的な環境を維持してワンちゃん・猫ちゃんの健康を管理しましょう。

 

お掃除は、電球の傘やカーテンレール、戸棚の上などの高いところから始めて、徐々に低い場所に移っていき、最後に床を掃除すると二度手間になりません。また床掃除の際は、最初にフロアー用の不織布のモップなどで抜け毛をざっくりと取った後に掃除機をかけると、落ちた抜け毛の飛散を防げるのでおすすめです。

 

カーペットやソファなどについた抜け毛は、コロコロクリーナーを使って取りましょう。ガムテープなどの粘着テープでも取れます。ただし接着剤がカーペットの毛や布地に移ってしまうことがあるため、粘着力が弱い粘着テープを使う方がおすすめです。

 

またゴム手袋をはめた手でやさしくカーペットの表面を撫でるようにすると、抜け毛が簡単に取れるので試してみてください。百円ショップで買える安価なゴム手袋で、アレルゲンとなる抜け毛を簡単に取り除けます。

 

ポイント

犬のブラッシング

・陸上での生活から身を守るために、皮膚や被毛が発達しました

・被毛には、外敵から身を守る他に体温調節を行う役割も担っています

・被毛には2種類の分類方法があります

 -毛の長さによる分類:長毛種、短毛種

 -被毛の構造による分類:シングルコート、ダブルコート

・ダブルコートの犬種・猫種には、大量の抜け毛が発生する換毛期があります

・換毛期は春(5〜7月)と秋(9〜11月)の年2回です

・換毛期には、普段以上にこまめなブラッシングを行いましょう

・ブラシは、長毛種か短毛種かで使い分けましょう

・ブラッシングや掃除による衛生管理は、アレルギー予防などの健康管理につながります

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