秋こそ愛犬・愛猫に健康診断を!重要性や活用法を解説します

ペットの健康としつけ

秋は健康診断に最適な季節

犬を抱く飼い主と獣医師

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

夏の暑さもひと段落し、涼しいと感じられる日が多くなってきました。秋は、厳しい暑さを乗り切り、だんだんと元気を取り戻してくる季節です。実はこの秋、元気を取り戻したワンちゃんや猫ちゃんたちの健康診断(健診)に最適な季節でもあるのです。

 

健診では、症状の有無に関わらず全身の健康状態をまんべんなく確認します。夏の暑さは、想像以上にワンちゃんや猫ちゃんの体にダメージを与えていますので、その影響を確認することができます。

 

さらに急激な気候の変化を受けて、実は体調を崩しやすくなる季節でもあります。忙しい年末年始などの時期に体調を崩して急な受診が必要になるのを避けるためにも、秋のうちに健診を行い、必要に応じて状態を整えておくことが有効です。また特に問題がなかった場合は、安心して寒い冬を迎えられるでしょう。

 

健康診断の重要性と活用法

動物病院の血液検査

 

ワンちゃんや猫ちゃんへの健診の重要性をご理解いただくため、健診の3つの目的と、健診結果を健康管理の中でどのように活用できるかについてお話しします。

 

○1.病気の早期発見

一つ目の目的は、早い段階で病気を発見することです。

どんな病気でも、治療はできるだけ早く、軽症のうちに始める方が望ましいです。なぜなら、治療で体にかかる負担を軽くしたり、治療期間を短くしたりできる可能性が高くなるからです。

 

しかし病気によっては、だいぶ進行しないと症状が現れない場合もあります。そのため、元気そうに見えても内側に潜んでいるかもしれない病気を見つけるために、定期的な健診は役に立つのです。

 

○2.健康時の状態把握

極端な例ですが、毎年定期的に健診を受けていても、受ける病院が毎回違うのでは、あまり効果的だとは言えません。信頼できる動物病院を見つけていただいたら、毎年その病院で健診を受けることをおすすめします。なぜなら、健診の結果を過去のデータと比較することで、わずかな異変にも気付けるからです。

 

健診を受けることで、ワンちゃん・猫ちゃんの健康時の状態が、数値と画像で残されます。定期的に受けることで、その変化を蓄積できるのが、定期健診の最大のメリットなのです。かかりつけの動物病院を見つけ、日常的な予防接種や寄生虫予防、治療、そして健診を受けてください。これらの積み重ねが、私たち獣医療関係者や飼い主様に、ワンちゃん・猫ちゃんのわずかな体調異変を気付かせてくれるのです。

 

○3. 生活習慣や環境の改善

健診は、病気を見つけることだけが目的ではありません。「健康な状態における変化」を察知し、適切なタイミングで予防措置を取れるのも、大切な目的の一つです。

 

血液検査や尿検査の数値は「正常」でも、徐々に悪化していることを察知した段階で生活習慣や食事内容を見直すことで、発症予防や進行の抑制ができることもたくさんあります。

 

特に視診による「肥満気味」、尿検査による「腎臓病の兆候」、口腔検査による「歯周病の兆候」に関しては、生活改善や療法食への切り替え、口腔ケアなどが功を奏すことも多いです。私たちは、健診結果でこうした生活習慣や環境などの改善提案もさせていただきます。

 

年齢別定期健診のポイント

犬のエコー検査

 

健診は、若齢期からシニア期までのすべてにおいて、全く同じポイントで検査を行うわけではありません。それぞれの年齢ステージに合わせて健診のポイントが異なります。そのため、ワンちゃん・猫ちゃんの年齢ステージや個々の状態に合わせて、検査項目もその都度カスタマイズを行えます。

 

具体的には、健診の予約時にご相談させていただきますが、年齢ステージごとの健診ポイントをまとめますので、参考になさってください。

 

○若齢期(1歳未満)

・先天性の異常の有無確認

・発育状態のチェック

・感染症の予防接種

 

○成犬・成猫(1〜6歳)

・生活習慣病、アレルギー、内臓の変化などによる病気の有無や兆候のチェック

・感染症の予防接種、寄生虫予防の状況確認

 

○シニア期(7歳以降)

・成犬・成猫の健診に加え、腎臓病、心臓病、関節疾患、腫瘍などの有無や兆候のチェック

 

健康診断の内容

子猫の診察

 

○共通|問診および身体検査(視診・聴診・触診)

飼い主様から、ワンちゃん・猫ちゃんの普段の過ごし方や様子、食事内容などを伺い、体重測定、体格チェック、心音チェック、関節や歩様(歩く姿勢や歩き方などの様子)のチェックなど、広範囲で身体検査を行います。口腔内検査も行います。

 

○若齢期(1歳未満)

・共通の検査で異常または気になる点があった場合は、精密検査を行い、先天性の疾患の有無などを確認します。

・感染症のワクチン接種が済んでいない場合は、週齢や健康状態に合わせて適切なワクチンの接種計画をご提案します。

・避妊・去勢手術を検討されている場合は、血液検査およびレントゲン検査等を行い、手術の可否を確認します。

 

○成犬・成猫(1〜6歳)

・共通の検査項目に、血液検査、尿検査、レントゲン検査を追加することが一般的です。必要に応じて腹部や心臓のエコー検査や、症例によってはCTによる高度画像診断をご提案する場合もあります。

・特に猫ちゃんは慢性腎臓病を発症することが多いのですが、最も早く察知できる変化は尿の比重に現れます。そのため猫ちゃんには、若いうちから尿検査も強くおすすめしています。

 

○シニア期(7歳以降)

・成犬・成猫の検査項目に、エコー検査も追加することが一般的です。シニア期に多くなる心臓や内臓の異常をできるだけ早く発見するためです。

・検査結果から必要だと判断した場合は、心電図検査、血圧測定、甲状腺ホルモン測定なども追加でご提案し、詳しく検査する場合もあります。

 

定期健診の頻度の考え方

元気に走る犬

 

若齢期および成犬・成猫の間は、最低でも年に1回の健診をおすすめしています。そしてシニア期以降のワンちゃん・猫ちゃんには、私は最低でも年に2回以上の健診をおすすめしています。

 

「年に2回なんて多すぎる」と感じられる飼い主様も多いのですが、成犬・成猫になると、小型犬や猫ちゃんの場合は1年で人間の4歳分、中型犬では5歳分、大型犬では7歳分の歳をとることを考えると、年に2回でも決して多すぎないとご理解いただけるのではないでしょうか。

 

ただし、健診で異常がなかったとしても、その後の発症がゼロになるわけではありません。定期健診で「現在の状態(数値・画像)」を残し、結果に応じて生活習慣・食事・運動・デンタルケアなどを見直すことが大切です。肥満傾向や運動不足、歯垢の蓄積などの病気の前段階のサインを見つけて早期に改善することで、リスクの低減が期待できます。私たちは、健診結果を具体的な改善提案につなげて、飼い主様とワンちゃん・猫ちゃんの健やかな暮らしに寄り添います。

 

ポイント

犬猫を抱く獣医師たち

 

・夏が終わり寒い冬を迎える前の秋は、愛犬・愛猫の健診に最適な季節です

・健診を定期的に受ける目的と活用法

 ―病気の早期発見   :最適な治療を早期に開始しましょう

 ―健康時の状態把握  :検査結果を定期的に蓄積しましょう

 ―生活習慣や環境の改善:検査数値の変化から適切な予防措置を行いましょう

・検査のポイントは、年齢ステージによって異なります

・検査のポイントに合わせて、事前に健診項目をカスタマイズできます

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