ワンちゃんが大好きな秋のお散歩を安全に楽しむための注意点
四感で満喫する秋の散歩

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
猛暑が続いていた夏もようやく影を潜め、本格的な寒さとなる前の、涼しくて過ごしやすい秋になりました。ワンちゃんも飼い主様も、夏に溜まっていた疲れが取れてきて、元気に体を動かしたくなってきている頃なのではないでしょうか。
秋の空気は、落ち葉や熟した木の実などでこれまでとは異なる秋らしいニオイに変わります。また地面に広がる落ち葉や枯れ枝、木の実などを踏みしめながら歩く時の、感触や音にもこれまでとは異なった趣があり、ワンちゃんは味覚を除いた四感(視覚・嗅覚・聴覚・触覚)を使って季節の変化を感じ、散歩を楽しむことでしょう。
そんな自然を満喫できる秋の楽しい散歩には、実は飼い主様が気付いていない危険要因が潜んでいることもあるのです。今回は、大切なワンちゃんとの秋の散歩を安全に楽しむため、飼い主様にぜひ注意していただきたいポイントをご紹介します。
秋の自然変化への対応

「秋になったなぁ」と感じる要因の1つは、涼しくて過ごしやすい気候です。しかし中には、ブタクサやヨモギなどの秋に飛散する花粉が原因の花粉症で、秋を感じる方もいるかもしれません。花粉症は、犬にも発症します。そのため、秋に飛散する花粉にアレルギーを持っているワンちゃんには、散歩の際に洋服を着せることも花粉症対策になります。
次に秋らしさを感じるのは、日照時間の短縮かもしれません。朝晩、今までと同じ時間に散歩に出かけても、薄暗かったり、時間によってはすでに真っ暗になったりすることもあるはずです。
ワンちゃんの視覚は、多くの色を認識できません。その代わりに、薄暗い中でもはっきりと見ることができます。そのため、暗い時間帯に散歩に出かけても、ワンちゃん自身の視覚を心配する必要はありません。しかし、人の視力は暗がりには弱いです。そのため、すれ違う自転車や車などからワンちゃんを守るために、ワンちゃんの服や首輪、リードなどに反射板やLEDライトなどを装着することで、不慮の事故から守ることができるでしょう。
寄生虫や感染症への対策

秋になり、高温多湿の環境から抜け出すことで、ノミ・ダニ・蚊などの活動が減っていくと感じるかもしれません。しかし、秋になっても蚊やノミは活発に活動していますし、マダニも草むらや落ち葉の下などに潜んでいて、散歩中のワンちゃんに寄生してしまいます。
ご存知の通り、蚊はフィラリア症を媒介します。またノミアレルギーのあるワンちゃんは、ひどい皮膚炎に悩まされます。またSFTSウィルスを持っているマダニに刺されると、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という、命を脅かすような人獣共通感染症を引き起こす可能性があります。
秋の自然を満喫しようと、ワンちゃんは落ち葉の上や草むらを好んで歩こうとするかもしれません。かかりつけの獣医師とよく相談をしながら、必要な期間はしっかりとノミ・ダニ・フィラリアの予防駆除対策を継続しましょう。横須賀地区の場合、気象状況から私は通年での予防をおすすめしています。帰宅後も、忘れずに足を洗い、体にマダニがついていないかをチェックしてあげましょう。
なお、横須賀地区で時々発生するレプトスピラ症は、秋が最も多くなる季節です。野ネズミや野生のリスがいる公園や山・海・川などでよく散歩をしたり、キャンプに行かれたりするご家庭のワンちゃんには、毎年定期的に10種混合ワクチンを接種して、レプトスピラ症の予防対策を行うことをおすすめしています。
犬に危険な秋の植物対策

先ほど、秋の散歩をワンちゃんは四感をフルに使って楽しむと申し上げました。しかし、中には味覚も加えた五感をフル活用しようとしてしまうワンちゃんもいます。なぜなら、秋になると緑の多い公園や山道だと、いろいろなキノコ類が生えていたり、並木道では銀杏やどんぐりなどの木の実が落ちていたりするからです。
キノコの中には、そんなに多くはありませんが、毒性を持っているものもあります。しかしそれを見分けるのは、専門家でも難しい場合があります。基本的には、自然に生えているキノコは、ワンちゃんが口にしないように気を付けてあげましょう。
また、秋の植物や木の実には、ワンちゃんにとって毒性のあるものも多いです。代表例を下記にご紹介しますが、ワンちゃんが植物や落ちている木の実などを口に入れないように、十分に注意をしてください。
<ワンちゃんに毒性のある植物や木の実の例>
・彼岸花(球根)
・銀杏(イチョウの実)
・どんぐり(樫や楢の実)
・いちじく(実)
なお、中毒性がない、または弱い木の実でも、喉や消化器に詰まらせてしまう可能性もありますので、基本的には拾い食いをさせないようにしつけを行うのが、ワンちゃんの安全のためにも大切です。また湿った落ち葉にはカビや細菌が繁殖していることも多いため、落ち葉そのものを口に入れさせるのも避けましょう。
帰宅後に、元気消失、嘔吐、下痢などの症状が見られた場合は、かかりつけの動物病院に連れてきてください。その際、「散歩の時に○○を口にしたかもしれません」などと可能性のある誤食した植物を教えていただけると助かります。発症するまでにかかる時間は、口にしたものによって数分から24時間以上かかるものまで、さまざまです。
ポイント

秋は、夏に溜まった疲れも癒え、ワンちゃんも飼い主様も、気持ちよく散歩や運動を楽しめる季節です。特に嗅覚や聴覚が優れているワンちゃんは、全身の感覚を使って季節の変化を楽しみます。秋になったら、ワンちゃんと楽しく散歩を楽しみましょう。秋ならではの危険要因を意識した注意点は、以下の通りです。
<ワンちゃんとの秋の散歩の注意点>
・散歩時の洋服着用は、秋の花粉症対策に有効です
・暗闇が苦手な人から愛犬を守るため、暗がりでも目立つ装備を工夫しましょう
・涼しくなっても油断せずに害虫対策を継続しましょう
・山・海・川で散歩やキャンプをするワンちゃんにはレプトスピラ症予防を行いましょう
・湿った落ち葉や植物、落ちている木の実などを口に入れさせないようにしましょう
実りの秋、スポーツの秋です。季節の変化を楽しみながら、ワンちゃんと一緒に安全で快適なお散歩を通して、家族の絆をより深められる秋にしましょう。