犬の骨肉腫について┃進行スピードが早く、転移も多い病気

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

骨肉腫とは骨から発生する悪性腫瘍の一種で、非常に転移しやすく強い痛みを生じる腫瘍です。犬の骨から発生する腫瘍はいくつかありますが、骨肉腫は骨腫瘍全体の90%以上を占めており、最も注意するべき腫瘍の一つです。

 

今回は、犬の骨肉腫の原因や症状、診断法や代表的な治療法などをご紹介します。

原因

骨肉腫は、セント・バーナード、グレート・デーン、ドーベルマン、ロットワイラー、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリーバーなどの大型犬〜超大型犬種に多く、その多くは中年齢〜高齢で見られますが、1〜2歳と若年齢でみられることもあります。

 

発生部位は、四肢の骨に多くみられ、他には顎、頭蓋骨、脊椎、肋骨などに発生します。

 

骨肉腫の正確な原因は特定されていませんが、特定犬種での発生が多いことから遺伝的な要因が関与していると考えられています

 

犬の骨肉腫は局所浸潤性が強く、早期に遠隔転移が生じる傾向があります。

 

症状

骨肉腫が四肢に発生した場合、患肢に痛みが生じ、かばうような歩き方がみられます。初期の痛みであれば、鎮痛薬で一時的に跛行は治まりますが、腫瘍の進行に伴って微小骨折や骨膜の破壊が起こると非常に強い痛みが伴います
また、強い痛みによって立ち上がれない、患肢を触ろうとすると嫌がる様子などもみられます。

 

また、顎にできた場合、口を開くときに痛みを感じることがあり、頭蓋骨にできると顔の形が変形することもあります。さらに、脊椎に発生した際は、神経症状などが認められます。

 

加えて、骨肉腫は肺へ転移するケースが多く、症状が進行すると呼吸が荒くなったり、咳が増えたりすることがあります

 

診断方法

痛みが生じている部位をレントゲン撮影し、骨折や関節炎などの整形外科疾患の有無を確認します。
また、骨肉腫は非常に転移しやすい腫瘍のため、胸部X検査、超音波検査、血液検査、CT検査なども行います。

 

当院の医療設備についてはこちらをご覧ください

 

ただ、骨肉腫の確定診断をするためには、組織生検を行う必要があります

 

治療方法

四肢の骨に発生した場合は、腫瘍がある部分の手足を切除する断脚術が一般的です。
断脚を行う主な理由は、以下2点です。

 

・骨肉腫による強い痛みから愛犬を解放するため

 

・転移・進行を防ぎ命を守るため

 

転移が起きていない状況で断脚を行えば、痛みを完全に取り除き、完治を目指すことも可能です。

 

また、極端に体重が重い大型犬でない限りは断脚後も散歩などの日常レベルの運動は可能です。
加えて、画像検査で転移が認められる場合は断脚術のみでは不十分なため、​​補助治療として抗がん剤治療も行います

 

しかし、画像検査で転移が認められない場合でも、顕微鏡レベルでの微小転移が起きている可能性があります。この場合は飼い主様とご相談の上、断脚術単独で治療を進めるか、抗がん剤治療も実施するかを決定します。

 

さらに、骨肉腫は強い痛みを伴うため、貼り付けるタイプの強力な痛み止めを使用して疼痛管理を行います

 

また、手足以外に骨肉腫が発生した場合には、手術での切除が可能かどうかは発生部位と病変の拡大範囲によります。手術が困難な場合は腫瘍の進行を遅らせる目的で抗がん剤治療を行います。

 

ご家庭での注意点

骨肉腫の原因は明確になっていないため、予防する方法はありませんが、早期発見・早期治療が重要です。
定期的に健康診断を受け、愛犬の様子を注意深く観察しましょう。その際、歩き方の異常や手足のしこりなどの気になる症状がみられた場合には、早めに動物病院にご相談ください。

 

まとめ

・骨肉腫は犬の骨に発生する腫瘍で、骨腫瘍全体の90%以上を占めています。
・進行スピードが早く、転移も多く激しい痛みが特徴の腫瘍で、早期に治療を開始することが大切です。
・治療の基本は断脚術です。転移が疑われる場合や手術による腫瘍の切除が困難な場合、抗がん剤を用いて治療を行います。
・骨肉腫による強い疼痛は通常の痛み止めではコントロールできないため、貼り付けるタイプの強力な痛み止めを使用します。

 

横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院

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