愛犬の下痢、どうすれば?獣医師が教える原因と対処法
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
愛犬の下痢に気づいたとき、「どうしてこんな症状が出ているのだろう?」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。下痢は一時的なものから深刻な健康問題のサインであることもあります。早めに原因を突き止めて適切に対処することが、愛犬の健康を守る鍵となります。
今回は、犬の下痢の一般的な原因や適切な対処法、そして動物病院へ相談するタイミングについて詳しく解説していきます。
犬の下痢の一般的な原因
犬の下痢はさまざまな要因で引き起こされます。その主な原因と特徴を以下にご紹介します。
1.フードの変更
新しいフードや油分の多い食事を与えられると、犬の消化器系が対応しきれず下痢を引き起こすことがあります。特に脂質が多い食事は、犬の胃腸に大きな負担をかけるため注意が必要です。
2.ストレス
環境の変化や新しいペットの追加、飼い主様の生活リズムの変化などがストレスとなり、下痢の原因になることがあります。犬はデリケートな性格のため、穏やかな環境を整えることが大切です。
3.病気(膵炎、胆嚢粘液嚢腫、腫瘍など)
膵炎や胆嚢粘液嚢腫、腫瘍、消化管の炎症性疾患など、下痢の背後には消化器系の病気が隠れていることがあります。特に膵炎は脂肪分の多い食事が誘因となり、消化不良や激しい下痢を引き起こします。
4.寄生虫
犬の体内に寄生する虫(回虫、鉤虫、鞭虫、ジアルジアなど)は、腸に炎症を引き起こし、下痢の原因となります。特に子犬や外での活動が多い犬は寄生虫感染のリスクが高いです。便が粘液状になったり、血が混じることもあります。
5. 細菌やウイルス感染
サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌、パルボウイルスやコロナウイルスといった感染症が原因で、下痢が引き起こされることがあります。これらの感染症は他の犬や環境からの感染が主な経路です。特にパルボウイルスは重篤な症状を引き起こし、命に関わる場合もあります。
下痢の症状と重症度の見分け方
愛犬の下痢が軽度か重度かを見極めるには、便の状態や頻度、犬自身の様子を観察することが重要です。
〈軽度の下痢〉
・便の状態:少し柔らかい程度で、粘液が混じる。
・頻度:通常よりやや多いが、1日に2〜3回程度に収まる。
元気があり、食欲も普段どおりであれば心配は少ないです。
〈重度の下痢〉
・便の色と硬さ:水のように液状、黒い便(消化管出血の可能性)、または血便がみられる。
・頻度:1日に何度も排便、または短時間で繰り返し排便しようとする。
元気がなく食欲も低下、脱水症状や発熱がある場合は緊急の対応が必要です。
家庭でできる犬の下痢の対処法
軽度の下痢には以下の方法が有効です。ただし、症状が重い場合や改善が見られない場合は動物病院を受診してください。
1. 一時的な絶食
軽度の下痢が続く場合、8〜12時間程度の絶食で消化器官を休ませます。ただし、子犬や体力が低下している犬には低血糖リスクがあるため、絶食する前に必ず獣医師に相談してください。
2. 消化に優しい食事
ゆで汁やお湯でふやかしたフードなどを少量ずつ与えましょう。
3. 水分補給
下痢によって失われる水分を補うことが重要です。清潔な水を常に提供し、飲む意欲が低い場合はスプーンで少量ずつ与えたり、無塩のスープを薄めたものを試してみてください。
なお、脱水症状が見られる場合には、皮下点滴など動物病院での速やかな対応が必要です。
4. 安静にさせる
活動量が多いと、消化器系にさらに負担がかかります。家の中で安静に過ごさせ、ストレスの少ない環境で回復をサポートしましょう。
獣医師に相談すべき症状とタイミング
以下の症状が見られる場合は、すぐに獣医師に相談してください。
・嘔吐を伴う下痢
・重度の脱水症状(皮膚の張りが戻らない、目がくぼむなど)
・2日以上続く下痢または再発する下痢
・血便、黒い便、発熱、食欲不振、体重減少など他の症状がある場合
下痢を予防するための日常的なケア
下痢を予防するためには、以下のポイントを心がけましょう。
1. 適切な食事管理
栄養バランスの取れた総合栄養食を与え、脂肪分の多い食事や人間の食べ物、突然のフード変更は避けましょう。また、定期的に食器の衛生状態も確認し、食べ残しは適切に処理することが大切です。
2. 定期的な健康診断
年に1〜2回の定期健康診断を受けることで、内臓の機能や健康状態を把握できます。特に消化器系の異常は早期発見が肝心です。身体検査や血液検査だけではなく、レントゲンやエコー検査を含めた全身的な健康診断をおすすめします。
3. ストレス軽減
安定した生活環境と規則正しい生活リズムを心がけましょう。適切な運動や遊び、飼い主様との良好なコミュニケーションは、ストレスの軽減につながります。
4. 予防接種と寄生虫対策
ワクチン接種や寄生虫予防(フィラリア予防、ノミ・マダニ駆除、定期的な便検査による内部寄生虫の検査)も重要です。
まとめ
・愛犬の下痢には様々な原因があり、健康に大きな影響を与える可能性があるため、早期発見と適切な対処が重要です。
・下痢の重症度を判断し、家庭での対応と獣医師に相談すべきタイミングを見極めることで、愛犬のリスクを減らすことができます。
・軽度の下痢の場合は、家庭でできる対処法(適切な時間の絶食、水分補給など)を試みることができますが、改善が見られない場合は早めに獣医師に相談しましょう。
・定期的な健康診断や予防接種、日々のケアを通じて、愛犬の健康状態を常に把握し、下痢の予防やリスク管理に努めることが大切です。
・飼い主様の細やかな観察と行動が、愛犬の生活の質向上につながります。下痢の症状に気づいたら、躊躇せずに獣医師に相談し、愛犬のケアに安心して取り組んでいきましょう。
横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院
カテゴリー