軟部外科
当院で一番多い手術が腫瘍の手術になります。

腫瘍を摘出する際に一番大切なのは、全身状態の把握になります。麻酔前のレントゲン、超音波検査にておおよその把握は出来ますが、腫瘍を摘出する前に良性か悪性かは解っていないことも多くあり、CTスキャンを用いた全身の精査は非常に大切になります。特に肺転移の有無はその後の治療に大きく係わってきます。また肝臓や肺など従来、手術に踏み込むのが難しかった腫瘍もCTスキャンの登場により術前に細部にわたるまで状況が確認でき、手術が適応になる症例が増えています。

主な症例

肝臓腫瘍

当院で一番多い手術が腫瘍の手術になります。腫瘍を摘出する際に一番大切なのは、全身状態の把握になります。麻酔前のレントゲン、超音波検査にておおよその把握は出来ますが、腫瘍を摘出する前に良性か悪性かは解っていないことも多くあり、CTスキャンを用いた全身の精査は非常に大切になります。特に肺転移の有無はその後の治療に大きく係わってきます。また肝臓や肺など従来、手術に踏み込むのが難しかった腫瘍もCTスキャンの登場により術前に細部にわたるまで状況が確認でき、手術が適応になる症例が増えています。

治療

肝臓腫瘍のなかで肝細胞癌は完治の可能性のある腫瘍です。腫瘤が塊状ですべて取りきることが出来れば予後は非常に良好です。この手術で活躍するのが超音波手術システムSonoSurgです。超音波振動により肝臓実質のみを破砕、吸引し、血管や胆管、神経などは温存されます。この機械の導入で以前より安全にかつ出血量も少なく手術を行うことが可能になりました。

写真の赤の矢印が 肝細胞癌のワンちゃんのCT画像です。

原発性肺腫瘍

犬や猫では比較的まれな腫瘍ですが近年増えつつあります。咳を主訴に来院され、レントゲンで白い影として確認されます。

症状がなくほかの目的でレントゲンの検査をしたときに見つかる事もあります。限局しているか否か、多臓器に腫瘍がないか、リンパ節の腫大、腹水の有無をCT検査で確認します。

治療

複数個が散在している肺腫瘍は外科摘出の対象外ですが、一葉に限局している場合は手術が対象になります。
リンパ節への転移がないもので早期に発見できた腫瘍は摘出により良好な経過が期待できます。

矢印が腫瘍です(CT画像)。

胆嚢切除(粘液嚢腫)

胆嚢粘液嚢腫は胆嚢内に粘液様物質が貯留して胆汁の粘調度が増加し、胆管拡張、胆嚢拡張による胆汁流出障害を引き起こす病気です。この病気の問題点は非常に重篤な状態になる可能性があるにもかかわらず、多くの場合発見された時には症状がないという点です。胆嚢内で粘液嚢腫になっていても胆汁の開通性にはほとんど影響しないため日常と変わりない生活がおくれています。しかし、一旦、総胆管が粘液様物質で閉塞してしまうと、急性黄疸や胆嚢破裂に伴う急性腹症、腹水貯留を引き起こし死に至る病気です。また多くのケースで肝炎の併発が見られます。

原因

明らかな原因は不明ですが、高コレステロール・高中性脂肪血症など高脂血症を生じる脂質代謝の異常や甲状腺機能亢進症が基礎疾患にあると言われています。濃縮された胆汁や胆石が刺激になり胆嚢壁での粘液の産生が増えると考えられています。また加齢に伴う胆嚢壁の劣化、運動性の低下も一因とされます。シェットランドシープドッグやミニチュア・シュナウザーが好発犬種と言われていますが、脂肪分が多いおやつを毎日食べている小型犬にも多く見られます。

治療

内科的治療は低脂肪食やビタミンの投与、甲状腺ホルモン剤の投与など胆汁うっ滞を解消する治療を行います。定期的にエコーで経過を観察することが大切です。内科的治療に反応しない場合、胆嚢を切除する手術を行いまますが、黄疸を呈してからや、胆嚢が炎症を起こしてからの手術はリスクが上がってしまうので、どのタイミングで手術を行うかがポイントになります。

写真中央が胆嚢です

会陰ヘルニア

中年齢以上の男の子がなる病気で会陰部の筋肉が弱くなることで発症します。

治療

当院では「ポリプロピレンメッシュを用いた解剖学的整復法」と精管固定、直腸固定、去勢手術を併せたより再発の少ない手術を行っております。会陰ヘルニアの手術は大きく分けると インプラントを使用する方法と、筋肉など生体膜を使用する方法 の二つに分けられます。当院ではポリプロピレンメッシュをインプラントとして使用しております。
骨盤の座骨にある閉鎖孔に左右からメッシュを潜らせ尾骨に固定します。左右から直腸をサポートすることができ内閉鎖筋などの生体膜を使用しないことで再発しにくくしています。この素材は人の鼠経ヘルニアなどでも使用されており生体反応に関しては問題がないとおもわれます。非常に柔らかい素材ですので動物の違和感も少ないと思われます。
またこの病気は男性ホルモンが関与する為、去勢手術を行い、弛緩している直腸を上方に牽引する直腸固定も併せて行います。比較的再発の多い手術になりますが、当院ではこの術式で良好な成績を収めています。