犬と猫の子宮蓄膿症について┃避妊していない子は要注意!
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
子宮蓄膿症は避妊手術を受けていない、中〜高齢のメス犬に多く発生する病気です。子宮に細菌感染が起こり、膿が溜まるため、重症化すると命に関わることもあります。
今回は、犬と猫の子宮蓄膿症の原因や症状、診断、治療方法などをご紹介します。
原因
子宮蓄膿症の明確な原因は分かっていませんが、以下の要因が関係していると考えられています。
・ホルモンのバランス乱れ
発情期の終わり頃に分泌されるプロゲステロンというホルモンの影響で、子宮内膜が厚くなり、免疫機能が低下します。
・細菌感染
大腸菌やブドウ球菌などの細菌が、外陰部や膣から子宮内に侵入し感染します。
・年齢
中高齢の犬、特に7歳以上の未避妊犬に多く見られます。
また、子宮蓄膿症と乳腺腫瘍の両方が発生するケースも見られます。
乳腺腫瘍については、こちらの記事で詳しく解説しています
症状
子宮蓄膿症の症状は、進行度によって異なります。
〈初期症状〉
・発熱
・食欲不振
・多飲多尿
・陰部から黄色っぽい膿が漏れ出す
〈進行した場合の症状〉
・腹部の膨張
・排尿困難
・下痢・嘔吐
・脱水症状
・意識レベルの低下
また、子宮蓄膿症には「開放性子宮蓄膿症 (子宮の中に溜まった膿が外陰部から漏れ出す)」と「閉塞性子宮蓄膿症 (子宮が収縮して子宮の中に膿が溜まり続ける)」の二種類があります。
開放性子宮蓄膿症は飼い主様が異変に気づきやすく早期に治療を開始できたり、そもそも膿が過剰に溜まることが少ないため症状も比較的軽い傾向にあります。
しかし、閉塞性子宮蓄膿症は膿が漏れ出さないため限界まで子宮に膿が溜まり、子宮破裂や敗血症などに発展することが多く、命を落とすこともあります。
診断方法
子宮蓄膿症の診断には、以下の方法があります。
・視診:腹部や陰部の腫れ、陰部からの排膿などを確認します。
・X線検査:子宮の腫れや腹膜炎による腹水などを確認します。
・超音波検査:子宮の大きさや内部の状態、その他腹部臓器の状態などを評価します。
・血液検査:主にCRPや白血球数、播種性血管内凝固の確認のために凝固系の数値などを測定します。
治療方法
子宮蓄膿症の治療として最も効果的なのは、卵巣子宮全摘出手術です。
手術後、飼い主様から「以前より元気になった」というお言葉をいただくことも多いです。また、手術を行うことでホルモンの乱れによる体調不良も改善される可能性があります。
なお、将来繁殖を検討していたり飼い主様が手術を希望されない場合は、抗生剤の投与や点滴による対症療法を行いますが再発する確率が高く、根本的な解決にはなりません。
ご家庭での注意点
子宮蓄膿症を予防する最も確実な方法は、早期に避妊手術を行うことです。避妊手術は、発情期のストレスや望まない妊娠を防ぐだけでなく、子宮蓄膿症、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍などの病気の予防にも効果があります。
また、普段から適切な食事と運動、ストレス管理などを行い、免疫力を高めることが大切です。
加えて、子宮蓄膿症を含む全ての病気は早期発見・早期治療が重要となります。1年に1回は健康診断を受けることを心掛けましょう。
まとめ
・子宮蓄膿症は、主にホルモンバランスの乱れによって子宮に細菌感染が起き、膿が溜まる病気です。
・未避妊の中〜高齢のメス犬に多く発生し、避妊手術で予防することができます。
・初期症状は発熱、食欲不振、多飲多尿、陰部から膿が漏れ出すなどです。
・子宮蓄膿症が進行すると、破裂した膿が腹部に広がり腹膜炎や敗血症などの重い合併症を引き起こし、命を落とすこともあります。
・定期的に健康診断を受けたり、普段から愛犬愛猫の健康状態をよく観察して病気の早期発見・早期治療に努めましょう。
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