三浦半島の気候と犬・猫の暮らし|獣医師が教える季節ごとの健康管理

ペットの健康としつけ

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

三浦半島で暮らしていると、四季折々の風や海の香り、季節の移り変わりを身近に感じる場面が多いのではないでしょうか。三方を海に囲まれたこの地域は、冬は比較的暖かく、夏は湿度が高く蒸し暑いという、全国でも特徴的な気候にあります。

 

私たちと一緒に暮らす犬や猫もまた、この三浦半島の気候変化に少しずつ影響を受けながら過ごしています。皮膚に赤みが出たり、呼吸が苦しそうに見えたり、あるいは季節の変わり目に体調を崩すといったこともあるかもしれません。

 

そこで今回は、三浦半島の気候が犬や猫の体調にどう関わるのか、そして「つだ動物病院」だからこそお伝えできる、地域に即した健康管理のポイントを、季節ごとにご紹介します。

三浦半島の気候とペットへの影響

三浦半島は神奈川県南部、相模湾・東京湾・太平洋に囲まれた海洋性気候の地域です。横須賀市の年間平均気温はおよそ16〜17℃と東京都心よりやや温暖で、冬も氷点下になることは少なく、雪もめったに降りません。

 

ただし、年間平均湿度は70%前後と高めで、特に6〜9月の高湿度期は皮膚疾患や呼吸器のトラブルが増える傾向があります。また、海からの潮風は塩分を含み、皮膚への刺激となることもあります。

 

このような気候は、以下のようなトラブルの一因となることがあります。
皮膚疾患(湿疹、外耳炎、マラセチア性皮膚炎など)
呼吸器症状(気管支炎など)
ノミ・マダニの繁殖リスク

 

また、春から秋にかけては台風や気圧の変化も頻繁にあり、気象ストレスによる食欲不振や体調不良が見られることもあります。これらを考慮し、三浦半島の気候に即した健康管理が求められます。

 

春~初夏(3月~6月)の健康管理

この時期は過ごしやすい気温ではありますが、花粉やノミ・マダニ、湿度の上昇など、見落としがちなリスクが潜んでいます。

 

・花粉症に注意
犬や猫にも「花粉症」はあります。特に皮膚が敏感な子は、スギやヒノキの花粉に反応して、かゆみや赤み、舐め壊しが見られることもあります。完全に花粉を遮断することはできませんが、散歩から帰った後のブラッシングや、濡れタオルでの拭き取りが効果的です。
犬猫の花粉症とケアについてより詳しく知りたい方はこちら

 

・ノミ・マダニの予防
三浦半島のような温暖湿潤な地域では、通年予防が理想的です。市販薬では効果が不十分な場合もあるため、動物病院で処方される予防薬を継続することをおすすめします。

 

・海辺の散歩のあとにはケアを
潮風に含まれる塩分や砂は皮膚に刺激を与えることがあります。散歩後は軽くシャワーで洗い流したり、濡れタオルで拭いたりすることが大切です。また、砂浜には割れた貝殻やガラス片が落ちていることもあるため、肉球のケガにも注意してください。

 

・梅雨時期の湿度対策
湿度が一気に高まる6月は、皮膚病の悪化やカビの繁殖が起こりやすい季節です。除湿器や空気清浄機、こまめな換気、寝具の洗濯と乾燥で、室内環境を清潔に保ちましょう。

 

また、梅雨の時期は外出の機会が減り、運動不足やストレスが溜まりやすくなります。室内でもできる遊びやおもちゃを取り入れて、心身のバランスを保てるように工夫してあげましょう

 

夏(7月~9月)の健康管理

三浦半島の夏は、日差し・湿度・海風の影響が重なり、犬や猫にとって想像以上に過酷な季節です。

 

・熱中症予防のポイント
日中の散歩は避け、早朝や日が沈んだ後の涼しい時間帯に行うようにしましょう。地面の温度が高いと、肉球が火傷する危険性もあります。散歩の前には、手のひらでアスファルトの温度を確認してください。また、車内放置は数分でも命に関わる危険があるため、絶対に避けてください。
熱中症対策についてより詳しく知りたい方はこちら

 

・皮膚トラブルへの対策
高温多湿の環境では、皮膚に汗や皮脂が溜まりやすく、マラセチアや細菌性皮膚炎の原因となります。定期的なブラッシングで通気性を保ち、毛のもつれを防ぎましょう。また、月1回程度のシャンプー(症状に応じては週1回)で皮膚を清潔に保つことも大切です。皮膚に赤みや湿疹が見られる場合は、早めの受診をおすすめします。

 

・海遊びの後は耳までしっかり乾かす
夏場は海岸でのレジャーを楽しむ方も多いですが、海水には塩分や細菌が含まれており、皮膚や耳に刺激となることがあります。海で遊んだあとは、全身をよく洗い流し、耳の中もしっかり乾かしてあげましょう。特に垂れ耳の犬種は、湿気がこもりやすく外耳炎を起こしやすいため注意が必要です。

 

秋~冬(10月~2月)の健康管理

秋から冬にかけては、気温がぐっと下がり、空気も乾燥してきます。三浦半島は比較的温暖とはいえ、急激な温度変化には注意が必要です。

 

・関節や呼吸器のケア
気温が下がることで、関節のこわばりや痛みが出やすくなります。特にシニア犬やシニア猫では、関節炎や慢性疾患が悪化しやすいため、冷えを防ぐ工夫が大切です。また、寒暖差によって呼吸器疾患(気管支炎や喘息様症状など)も増える傾向にあります。暖房で温めすぎた室内と外気の差が激しいと、体調を崩すこともあるので、室温の急変を避ける工夫も必要です。

 

・乾燥対策と室内環境
冬場は加湿器を使って湿度を50〜60%に保ち、皮膚や呼吸器の乾燥を防ぎましょう。換気と加湿をバランスよく行うことが大切です。
犬が冬を快適に過ごすための室温管理と換気のポイントについてより詳しく知りたい方はこちら

 

・高齢や小型犬の寒さ対策
体温調整が難しいシニアや、短毛・小型の犬種(チワワ、イタグレなど)は特に寒さに弱くなります。毛布・ヒーター・防寒ウェアなどで体を冷やさないようにしましょう。
寒い日の外出は時間を短くするか、室内での運動に切り替えることも検討してみてください。
寒さに弱い犬種の特徴と寒がりでも快適に過ごせる室内環境管理についてより詳しく知りたい方はこちら

 

三浦半島でのペットとの暮らしを快適にする日常ケア

気候に応じた体調管理とともに、日々の暮らしの中でも意識したいポイントがあります。

 

・日々の健康チェック
耳のにおいや汚れ、皮膚の赤みなど、ちょっとした変化にも早く気づけるよう、毎日のスキンシップを大切にしてください。

 

・散歩コースと時間帯の工夫
夏は日陰を選び、冬は日差しがある時間に出かけるなど、三浦半島の気候に合わせた散歩スタイルを意識しましょう。海辺の散歩は、風が強い日や雨の後を避けるとより安全です。

 

・災害への備えも大切に
台風や地震に備え、犬・猫用のフードや水、常備薬、トイレ用品などの備蓄を整えておくと安心です。動物避難所や同行避難のルールについても、一度確認しておくとよいでしょう。
ペットとの同行避難や日頃から準備しておくことについてより詳しく知りたい方はこちら

 

まとめ

・三浦半島特有の温暖多湿な気候は、皮膚や呼吸器に影響しやすく注意が必要です
・季節ごとの気候変化に応じた健康管理が、病気の予防と快適な生活につながります
・日々のスキンシップと観察で、小さな体調変化に早く気づくことが大切です
・散歩や住環境の工夫、災害への備えも健康維持の一環です
・地域の気候を熟知した獣医師に相談し、適切なケアを受けることが安心につながります

 

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