春から夏にかけての注意事項
春には盲点も
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
犬や猫も、人と同様に寒暖差や湿度などによって健康状態が大きく影響を受けます。特に、人のように汗をかいて自分の体温を調節できない犬や猫にとって、高温は最も注意すべき事項の一つです。
しかし、夏にはどの飼い主様も温度・湿度管理に注意をされるのですが、春にはあまり注意をされない飼い主様が多いようです。実は、犬や猫達への高温リスクは春から高まっています。暑さと湿度の高さが原因の熱中症、皮膚炎、外耳炎による来院は、春から増えてきています。
そこで今回は、春から夏にかけての愛犬、愛猫への健康管理で注意すべき事項についてご説明します。
気温に関する注意事項
春から夏にかけて、徐々に気温や湿度が上がっていきます。人にとってはあまり暑いと感じない春でも、汗をかけない犬や猫にとっては熱中症になるリスクが潜んでいます。人が快適だと感じる温度よりも、犬や猫達が快適に過ごせる温度は低めだということを知っておきましょう。
人の場合は、エアコンの温度を26〜27℃に設定する場合が多いと思いますが、犬や猫のためには、20℃程度に設定するのが良いようです。当院も、入院室の温度は20℃に設定しています。
また、湿度は60%以下が目安です。温度だけではなく、エアコンの除湿機能などを利用して、湿度にも気をつけましょう。また、シャンプーなどで体が濡れた場合は、一度しっかりと乾燥させた上で、肌の保湿対策を行うことが大切です。
気温や湿度に関連して気をつける病気は、犬、猫共に、熱中症、脱水症です。部屋の換気やサーキュレーターの利用などで通気を良くする、エアコンで一定の温度と湿度に維持させるといった方法で、快適な環境を作りましょう。特に猫の場合は、換気の際に窓等から脱走しないように気をつけてください。
あわせて、フード管理にも注意が必要です。高温多湿でフードが傷むと、嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こす原因になります。特にウェットフードは傷みやすいので、給餌をしても食べなくなったら、放置せずにすぐに下げましょう。ウェットフードは1回で使い切るのが理想ですが、朝晩で2回に分けたい時などは、しっかりと密封して冷蔵庫に保管しましょう。
ドライフードの管理にも注意が必要です。一度開封するとどうしても湿気を含んでしまうため、大袋よりも小袋に分けられている方が好ましいです。大袋でしか購入できない場合は、一旦小袋に詰め替え、しっかりと密封して保管するようにすると、必要以上に開封せずに済むため管理しやすいです。また、ドライフードは冷蔵庫に入れないほうが良いです。出し入れする際の温度差で結露になりやすいからです。
熱中症の予防には、犬も猫も、いつでも新鮮な水をたっぷりと飲めるようにしておくことが大切です。特に飲水量が元々少ない猫は、春の寒暖差で体調を崩し、普段以上に水分を摂らなくなる場合があります。その結果熱中症だけではなく、尿石症などの尿路系疾患にもかかりやすくなりますので、注意が必要です。
猫でなかなか普通の水入れからだと飲んでくれない場合は、氷水を入れたペットボトルをトレイに入れておき、表面にできた結露を舐めさせるという方法を試してみると、効果がある場合があります。猫の祖先が、草花や岩肌などの朝露を飲んでいた習性を利用した方法です。
換毛期に関する注意事項
犬種や個体差もあるため、すべての犬や猫に必ずあるというわけではありませんが、多くの犬や猫は、冬になるとアンダーコートといって防寒用のふわふわの冬毛を生やします。しかし、春から夏に向けては、この冬毛が抜けて夏毛だけに生え変わります。この期間を換毛期といい、大量の抜け毛が発生します。
換毛期は、長毛種だけではなく短毛種でも油断はできません。抜け毛をそのまま体に残しておくと、毛が絡まり、蒸れてしまいます。それがきっかけで皮膚に常在している細菌や真菌(かび)などが異常増殖してしまい、皮膚炎を起こす原因になります。
また、猫の舌の表面は櫛のようになっていて、セルフグルーミングにより自分の抜け毛をこそげ落とすのですが、それをそのまま飲み込んでしまい、胃の中に毛玉が溜まってしまう毛球症になりやすいです。それを予防するためにも、抜け毛の手入れは大切です。
換毛期には、犬も猫も、こまめで丁寧なブラッシングを行い、抜け毛を体表に残さないようにしましょう。それには、頻度も大切ですがブラシ選びも大切です。短毛種にはラバータイプのブラシが、長毛種にはスリッカーとコームの併用がおすすめです。
長毛種も短毛種も、首、背中、お尻、脇腹、前足、後ろ足、顎の下から胸、そして尻尾まで、しっかり丁寧にブラシで梳かします。また長毛種の場合は、脇の下やお腹、内股までしっかりとコームで梳かしましょう。
飼い主様の生活変化がストレスになることも
特に春は、飼い主様の生活が変わる節目となりやすい季節です。入学、卒業、就職、転勤、転職等々で引っ越しをしたり、生活リズムが変わったりされる方も多いのではないでしょうか。
愛犬や愛猫は、そんな飼い主様の生活の変化を受け、それがストレスとなってしまう場合もあります。飼い主様ご自身もいろいろと大変な時期だとは思いますが、愛犬や愛猫にも大きな影響を及ぼしているということに配慮しながら、身体だけではなく、メンタル面も含めて配慮をしてあげてください。
いつもとは違う様子や行動、仕草を示した場合は、しばらく様子を見ようかと迷わずに、どうか早めにお近くの動物病院で診てもらってください。病気は時間を選びません。日頃から、夜間でも診てくれるところを見つけておくと良いでしょう。
<こんな様子が見られたら動物病院に相談を>
・いつもは大好きな食事なのに食べようとしない
・散歩に行きたがらない
・動きたがらない
・歩く様子が下を向いてつらそうである
・うずくまってじっとしていることが多い
・飼い主さんへの反応が鈍い
・眼に力がない
・おしっこの量が少ない(トイレに入るのにおしっこが出ていない)
また、春はいろいろな予防が始まる時期でもあります。フィラリア予防、ノミ・ダニ予防、狂犬病ワクチン接種など、お住いの地域にあった時期にきちんと実施するようにしてください。
春から夏にかけての注意事項に関するまとめ
ポイント
・夏になる前から高温多湿は犬や猫に多くのリスクをもたらします
・温度と湿度を一定に維持して快適な環境を作りましょう
・春から夏にかけては、フードの扱いや保管にも注意が必要です
・飼い主様の生活の変化が、愛犬、愛猫のストレスになる場合があります
・いつもと異なる様子や行動、仕草をしている時は迷わず早めに動物病院に行きましょう