考えよう、犬と猫の夏バテ予防

犬猫の病気や症状

夏バテの原因は体温調節

夏バテの犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

前回は、夏バテの症状と対処法、そして夏バテの症状によく似た気をつけたい病気をご紹介しました。今回は、夏バテの原因と予防法についてお話したいと思います。

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夏バテは、暑さによる体温調節が原因で起こります。私達人間も、ワンちゃんや猫ちゃんも、同じ恒温動物です。そのため、生きていくためには体温を常に一定の範囲に保たなければなりません。そのため、外気温が高くなるに伴い体温が上昇すると、体は体温を下げようとします。そのため、暑い日が続いたり、1日の中で5℃以上の温度差が発生するような日が続いたりした場合、体が体温調節についていけなくなって体調を崩しやすくなるのです。

 

ですから、体が体温を下げるのを外から手伝ってあげることができれば、夏バテを予防できるでしょう。そのためには、体温を下げる体の仕組みを理解する必要があります。実は、体温を下げる方法は人間と犬と猫では、それぞれに異なっています。そこで、犬と猫がそれぞれ体温を下げる方法をご紹介します。

 

その前に、体温を下げるための仕組みに関して、ごく簡単に復習しておきましょう。

 

体温を下げるための仕組み

汗をかく人

 

アイスコーヒーを作る時、カップに氷をたくさん入れておき、そこに熱いコーヒーを注ぎますよね。すると、氷は溶け、熱いコーヒーは冷たくなって、コーヒーと氷の温度はどんどん近づいていきます。このように、温度が異なる2つのモノを接触させると、高温のモノから低温のモノに熱が移動し、やがて同じ温度になって安定します。

 

つまり体温を下げるということは、高くなった体温(熱)を、体外に移動させるということなのです。熱が移動する現象には、「熱伝導」「対流」「熱放射」という3つがあります。

 

熱伝導:個体の中で起こる、熱が高温部から低温部へと移動する現象のこと

対流:液体や気体などの流体の中で起こる、熱が移動する現象のこと

熱放射:熱せられたモノから電磁波による熱が放射される現象のこと

 

熱放射は、ちょっと分かりづらいかもしれませんね。電磁波という形で直接伝わる熱の具体例を挙げると、太陽の暖かさ、赤外線のこたつや薪ストーブの熱などが該当します。

 

もう一つ体温を下げる仕組みとして使われる方法に「気化」があります。水は温度によってその姿(状態)を氷、水、水蒸気と変化させます。そして、氷から水へ(融解)、または水から水蒸気へ(気化・蒸発)するために、熱を使います。この気化する時に使われる熱(気化熱)が、体温を下げる時に利用されているのです。

 

私達人間はもちろん、ワンちゃんや猫ちゃんも、これらの方法を活用して体温を下げています。例えば私達人間の場合、外気温が体温よりも高くなると、全身が汗だくになりますよね。この汗が乾く時に、体に溜まった熱が気化熱として使われ、失われます。つまり人間は、主に汗をかくことで体温を下げているのです。

 

では、ワンちゃんや猫ちゃんが体温を下げるための具体的な方法を見ていきましょう。

 

犬や猫が体温下げる方法

パンティングする犬

 

ここでは、私達の目には見えない体内の仕組みについてではなく、ワンちゃんや猫ちゃんの行動として目に見える、暑い時の体温調節法についてご説明します。ポイントは、人間のように流れるような汗をかくための汗腺が、犬や猫には肉球と鼻先といったごく限られた場所にしかないため、汗をかくことで体温を下げられないということです。

 

<犬の場合>

ワンちゃんも、「気化」を利用して体温を下げます。ただし、気化させるのは汗ではありません。

ワンちゃんは、激しい運動をして体に熱が溜まった時や夏の暑い日には、口を開けて舌を出し、ハァハァと荒い息遣い(パンティング)になります。こうすることで、口の中や舌についたよだれを気化させているのです。

病気で息苦しくてパンティングしている場合もありますが、体温が平熱に戻ったらパンティングもおさまったという場合は、体温調節のための行動なので心配ありません。

 

<猫の場合>

猫もパンティングをします。しかし猫がパンティングをしている場合は、余程ひどい暑さや息苦しさを感じているというサインです。そのため猫ちゃんには、パンティングを始める前に夏バテ予防をすることが大切になってきます。

猫ちゃんは、家の中で最も居心地の良い場所を見つけ出す天才です。夏の暑い日は、自ら玄関、廊下、洗面台などのひんやりとした場所に行き、体を広げてくつろいでいますよね。これは、熱伝導を利用して体の熱を下げているのです。またお腹や手足を広げるのは、熱放射を利用して体内の熱を放散させるためなのです。

また涼しい場所に行ってしきりに毛づくろいしていることがありますが、これは体表についた唾液が気化することで体温を下げているのです。

 

犬と猫の夏バテ予防法

涼む猫

 

<犬の場合>

・しっかりと水分補給を行う

ワンちゃんは体温を下げるためにパンティングをするため、体内の水分がどんどん減っていきます。脱水症状を起こさせないために、室内でもお散歩中でも、しっかりと水分を補給してください。

・温度差をできるだけ少なくする

ワンちゃんはお散歩に行きますので、どうしても1日の中で温度差のある場所へ出入りすることになります。暑さを避けるためはもちろんですが、激しい温度差を抑えるためにも、お散歩に行く時間帯やコースを変更して、なるべく涼しい時間帯、場所を選びましょう。場合によっては、室内ドッグランを利用するのも良いでしょう。

 

<猫の場合>

・室内を自由に行き来できるようにする

猫ちゃんの場合、家の中で最も居心地の良い場所をみつけて、自分で対処します。それが猫ちゃんにとって最善の夏バテ予防です。そのため、空調で管理された部屋、管理されていない部屋、廊下、玄関等を解放して、自由に行き来できる環境を整えましょう。その際、床面だけではなく高い場所の開放も大切です。空気の対流も含めて、最も良い環境を選びます。

・しっかりと水分補給を行う

猫ちゃんは汗もかかず、パンティングも基本的には行いません。しかし、涼しい場所で毛づくろいをすることで、気化熱を利用した体温調整を行います。そのため、ワンちゃんと同じように唾液をよく使い、水分が不足気味になりがちです。元々猫はあまり水を飲みませんが、特に夏場は水を飲ませる工夫をしましょう。

 

<共通の方法>

他にも、ワンちゃんや猫ちゃんには共通して下記のような予防法が有効です。

・涼しい風に直接当たれる場所を作る

全身に汗をかくわけではないので、普通の扇風機の風ではあまり効果を期待できませんが、体温よりも低い温度の風にあたることで、体温を下げられます。

ただし、涼しい風に当たれる場所に、「自由に出入りできる」状況であることが肝心です。

・リラックスできる環境を作る

ワンちゃんも猫ちゃんも、安心してリラックスできる環境にいることで、お腹や足を広げて寛げ、熱放射を利用して体温を下げられます。

またリラックスできる環境で睡眠により疲れをとることで、夏バテを予防できるでしょう。

・バランスのとれた食事を最適な量だけ摂らせる

前回のブログでも、夏バテへの対処のポイントは「温度・湿度」「食事」「水分」だとお話しましたが、予防法としても同じことが言えます。ワンちゃんや猫ちゃんそれぞれに適した栄養バランスの食事を、必要な量だけしっかりと食べさせて、暑さに耐えられる体力を維持させましょう。ただし、肥満は夏バテや熱中症へのリスクを高めます。くれぐれも過食にならないように気をつけてください。

 

ポイント

熟睡する犬と猫

ポイント

・犬が体温を下げる主な方法は「パンティング」

・犬の夏バテ予防に大切なのは「水分補給」と「温度差の縮小」

・猫が体温を下げる主な方法は「涼しい場所への移動」

・猫の夏バテ予防に大切なのは「自由に移動できる環境」と「水分補給」

・犬と猫に共通して大切なのは「自由に涼しい風に当たれてリラックスできる環境作り」と「正しい食事管理」

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