寒い冬を愛犬が安全快適に過ごすための準備

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寒さに強い犬弱い犬

寒そうな犬たち

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

早いもので11月も終わりに差し掛かり、本格的に寒い冬が目前に迫ってきました。寒い冬は、人にとっても健康や事故に気遣いながら生活をする時期ですが、犬にとっても同じです。寒さが及ぼす影響は決して小さくありません。

 

寒さに対する耐性は、犬種によっても異なります。詳しくは、以前書いた<寒さに弱い犬種の冬の健康管理>をご一読ください。また犬種に限らず、子犬や老犬も体温の調整機能が未発達または衰えているため、寒さに弱いので注意が必要です。

 

このように、犬種や年齢、健康状態などによって寒さの感じ方はそれぞれですが、一応の目安は室温20℃前後、湿度50〜60%程度です。この環境を一定に保つ工夫をなさってください。

 

寒さが犬に与える影響

丸まって寝る犬

 

なんとなく犬には雪の中を駆け回っているイメージがあり、寒さに強いような気がしてしまいがちですが、寒さは免疫力を低下させます。そのため、冬は犬にとっても感染症にかかりやすくなったり持病が悪化しやすかったりと、健康管理には特に注意を要する季節です。

 

冬にかかりやすい病気についても以前<冬にかかりやすい病気>で書きましたが、前述の感染症の他に、泌尿器系疾患、呼吸器系疾患、関節疾患などへの注意が必要です。また空気の乾燥が犬の肌も乾燥させますので、皮膚トラブルも生じやすくなります。

 

寒さのために愛犬の飲水量は減りがちですが、しっかり水分を摂らせるために、積極的に散歩にでかけたり室内で適度な運動をさせたりしましょう。水分不足は尿路結石、膀胱炎、尿路感染症に繋がります。

 

また冬の空気は、気温が下がると共にとても乾燥しがちなのも特徴の一つです。乾燥した空気は、ウイルスにとってはとても活動しやすい環境です。それにも関わらず、乾燥は犬の喉や鼻の粘膜を刺激し、免疫力を下げます。そのため感染症や呼吸器疾患にかかりやすくなるのです。また皮膚の乾燥は皮膚のバリア機能を低下させるため、肌トラブルにも注意が必要です。乾燥する冬のスキンケアについては、<乾燥する冬に特に大切な犬のスキンケア>も参考にしてみてください。

 

雪の中を駆け回る犬

 

冬になると、身体は寒さに備えて皮下脂肪を蓄えやすくなります。その上に、寒くて動きたがらなくなることで、肥満になりやすくなる点にも注意が必要です。人と同様に、犬にとっても肥満は万病の元です。できるだけ健康な状態で長生きしてもらうためにも、肥満にさせないように愛犬の体重コントロールが大切です。

 

運動不足のためには運動をさせる必要があるのですが、運動についても寒さは厄介です。なぜなら、寒さで関節周辺の血流が滞り筋肉が強張りがちになるためです。そのため、冬は特に運動をさせる前後のケアが大切になります。急に運動をさせるのではなく、散歩前に優しく足をマッサージしたり、ゆっくり歩き始めたりするなどの工夫をしてあげましょう。

 

病気だけではなく、雪の日の長時間の散歩による肉球の凍傷や、暖房器具によるやけどなどの事故にも気を付けてあげましょう。

 

犬が寒いと感じている時に見せるサインを下記に挙げておきますので、参考にしてください。

・小刻みにブルブルと震えている

・ケージや部屋などの隅の方で体を小さく丸めている

・ベッドの下などに潜り込んでいる

・いつもよりも水を飲む量が少ない

・散歩に行きたがらない

・いつまでも寝ていて起きてこない

・いつも以上に人の側に居たがる

 

冬に向けての室内環境

ストーブで温まる犬

 

最後に、愛犬の冬のリスクを下げて快適に過ごせる室内環境のポイントについてお話します。

 

まず、あまりおすすめしない暖房器具は「こたつ」と「カイロ」です。もちろん、十分に注意しながらであれば、使ってはいけないというわけではありません。ただ、事故が多いのも事実なので、それを知った上で使用していただきたいのです。

 

こたつは、飼い主様ご家族とワンちゃんとで共用されているお家も多いかもしれません。こたつに入ると、人もなかなか出られなくなってしまいます。それと同じで、ワンちゃんもこたつの中にすっぽりと入ってしまい、そのまま気持ちよくなって眠ってしまうことがあるのです。

 

特にお腹の部分の毛が薄くなっている犬にとって、こたつの中で温かい床面におなかをベタっとつけて眠るのは、とても心地が良いのでしょう。それでかえって熱中症になってしまい、病院に運び込まれるという事故があるのです。時々こたつ布団を開けて、あまりこたつ内の温度を上昇させないようにする、こたつの中でワンちゃんが眠ってしまったら起こして外に出すなどの対策をとってください。また、カイロもいたずら好きのワンちゃんが噛みちぎってしまって中身を誤飲する事故が多いので、注意が必要です。

 

安全な防寒対策の例を挙げておきます。

・エアコンと一緒にサーキュレーターを使用して暖かい空気を床面の方まで循環させる

・ワンちゃんの寝床にブランケットを敷く

・アルミ素材を使用した蓄熱製品(マット、ブランケット、ペット用マット等)を敷く

・外出時の防寒着着用

・散歩の前後に耳、足先などの冷えやすい部分をマッサージする

・毎日のブラッシングによる血行促進と保温効果アップ

・飼い主様の目が届く範囲でペット用ヒーターを使用

 

ワンちゃんの防寒対策で特に注意すべき事項をまとめると下記になります。

・必ず、ワンちゃんが過ごしている床面付近の温度で判断しましょう

・電気製品を使用する場合は、低温やけどや感電事故に気をつけましょう

・体温調節機能が低下した高齢犬を除き、防寒着の着用は原則外出時のみとしましょう

・ワンちゃんに無理のない範囲で、毎日散歩または室内で運動をさせましょう

・ストーブを使用する場合は、周囲にガードを設置しましょう

 

特に、ワンちゃんが普段過ごしている床面は、人の生活空間よりも温度が低いので、低い位置に温度計を設置する、飼い主様がしゃがんで床面近くの温度を体感するなどによる確認が大切です。

 

ポイント

防寒着で散歩する犬

 

ポイント

・寒さは愛犬が感染症や泌尿器系疾患、呼吸器系疾患、関節疾患にかかるリスクを高めます

・寒くて散歩を嫌がっても、毎日きちんと運動をさせることが大切です

・寒くて筋肉が強張っているので、急に激しい運動をさせてはいけません

・暖房器具は、やけどや熱中症、誤飲などのリスクを十分に考慮して使用しましょう

・ワンちゃんが生活している床面は人の生活空間よりも温度が低いことを意識しましょう

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