乾燥はお肌の大敵!犬や猫の健康を守るためにもスキンケアを!

ペットの健康としつけ

寒い時期のスキンケア

敷物の下で暖を取る犬と猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

動物の体の中に病原体が侵入しやすい入り口はどこでしょうか。おそらく口・鼻・耳・目などを思い浮かべたのではないでしょうか。他にも、普段洋服を着ないワンちゃんや猫ちゃんにとっては、肛門や尿道なども、病原体が侵入しやすい場所です。

 

これらの共通点は、皮膚に覆われておらず、体内に直結している穴のような形状をしていたり、粘膜に覆われたりしているということです。このことからも分かるように、皮膚は病原体の侵入を防ぐ役割を担っています。この皮膚の機能を「バリア機能」と言い、主に皮膚の最も外側にある角質層が担っています。

 

角質層は、陸上で暮らしている動物の皮膚にしかなく、病原体の侵入を防ぐのと同時に、体内の水分やミネラルなどの必要な成分が外に漏れ出てしまうことも防いでいます。このように大切な皮膚ですが、ワンちゃんや猫ちゃんたちの皮膚は、人間の赤ん坊の皮膚よりも薄く、非常にデリケートです。

 

皮膚のバリア機能を維持するために忘れてならないのが、保湿です。寒くて乾燥する秋以降の関東地方に暮らしているワンちゃんや猫ちゃんには、日頃のケアの中にスキンケアも忘れずに加えましょう。

 

ところで、ワンちゃんと猫ちゃんとでは、スキンケアの考え方に違いがあります。その点を意識していただけるよう、ワンちゃんと猫ちゃんそれぞれのスキンケアのポイントや、共通事項についてお話ししていきます。

 

ワンちゃんのスキンケア

犬のシャンプー

 

◯犬のスキンケアの考え方

人と犬と猫の3者間で比較すると、皮膚表面のpHが最もアルカリ性に近い犬が、最も雑菌が繁殖しやすいというリスクを持っています。しかも、犬は毎日外に出るため、猫よりも汚れやアレルゲンを体に付けやすいという面も持っています。

 

そのため、ワンちゃんのスキンケアは、衛生面を重視して洗浄を優先し、かつバリア機能を維持するための保湿ケアを行うという考え方になります。

 

◯ブラッシング

ブラッシングには、毛に付いた汚れや抜け毛を取り除く効果がありますが、他にも皮膚を適度に刺激することで血行を促すという効果もあります。皮膚の血行が良くなることで、皮膚細胞や毛根、毛などの正常な成長を促進します。さらに、ブラッシングは毛の表面を覆っているキューティクルも整えるため、毛艶も良くなります。

 

ブラッシングの頻度の目安は、長毛種の場合が毎日または2〜3日に1回、短毛種の場合は週に数回ですが、換毛期にはいずれも毎日行いましょう。

 

◯シャンプー

犬のスキンケアの基本は「衛生管理」と「保湿」なので、犬のスキンケアではシャンプーも大切な要素になります。

 

特に気をつけていただきたいのが、犬専用のシャンプーを利用することと、ワンちゃんの体につけるシャンプーは、事前に十分に泡立ててからにすることです。犬専用のシャンプーでなければならない理由は、犬の皮膚のpHにあったものを使わなければ皮膚にダメージを与えてしまうからです。事前に十分な泡立てが必要な理由は、皮膚への摩擦が強くなりすぎたり必要以上の量をつけてしまったりなど、やはり皮膚に与えるダメージを防ぐためです。

 

シャンプー後はしっかりとすすいだ後、保湿剤で保湿します。掛け流しやスプレーなどのタイプがありますので、使いやすいものを選んでください。すすぎの際に、保湿剤を入れたお湯に入浴させるのも良いです。最後はタオルドライとドライヤーでしっかりと乾かします。ドライ後の乾燥が気になる場合は、アフターケアで保湿剤を塗布しましょう。

 

シャンプーのしすぎは必要な皮脂を落としてしまうため、頻度は月2回が目安です。特に汚れたり、体臭がきつくなったりしたら、適宜行いましょう。アトピー性皮膚炎の場合は、週1回のシャンプーが必要になることがあります。この場合は、バリア機能を維持するために保湿が特に重要になります。

 

このような皮膚トラブルを抱えているワンちゃんの場合は、動物病院と相談しながら、適切なシャンプーを行なってあげましょう。

アトピー性皮膚炎については、以前のブログも参考になさってください。

<犬と猫のアトピー性皮膚炎について|強いかゆいが日常的に続く…>へのリンク

 

また当院では、予約制でトリミングもお受けしています。シャンプーのみのコースもご用意しておりますので、お気軽にご相談ください。血行改善効果や皮膚表面での菌の増殖を抑える効果が期待できる「炭酸泉」や、皮膚バリア機能が低下してシャンプーのリスクが大きくなっているワンちゃんにも適応できる「マイクロバブル」にもご対応いたします。

つだ動物病院トリミングのページへのリンク

 

猫ちゃんのスキンケア

猫のブラッシング

 

◯猫のスキンケアの考え方

猫ちゃんの場合、ワンちゃんと比べるとそれほど衛生面に神経質になる必要がありません。なぜなら、猫ちゃんは頻繁にセルフグルーミングをするため、自分で皮膚の衛生を維持できるからです。

 

しかし、そのセルフグルーミングが原因で注意しなければならないのが、抜け毛を飲み込んで起きる毛球症です。そこで、猫ちゃんにとってのスキンケアの中心は、ブラッシングによる抜け毛や汚れの除去と血行促進になります。

 

◯ブラッシング

換毛期以外の短毛種なら、ブラッシングをしなくても問題ないと思われている飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。被毛は、成長期−退行期−休止期という一定のサイクル(毛周期)を経て抜け替わります。つまり毛が抜けるのは換毛期に限りません。また短毛種は毛が短いため毛周期が短く、長毛種よりも毛が抜けやすいということを知っておきましょう。

 

ブラッシングの頻度は、短毛種の場合週に数回、換毛期の場合は毎日が目安です。長毛種の場合は、毛球症の他に、長い毛が絡んで皮膚が蒸れやすくなるのを防ぐため、換毛期以外でも毎日行いましょう。

 

共通する注意点

犬の耳掃除

 

◯耳

健康なワンちゃんや猫ちゃんは、耳の穴の中の掃除は必要ありません。頭から飛び出している「耳介」の内側の汚れを優しく拭き取る程度で構いません。綿棒などで耳の穴の中まで掃除をしてしまうと、かえって耳垢を奥に押し込んでしまうため控えましょう。

 

◯肉球と爪

爪切りも大切です。爪は下に向かって湾曲したくさび形に伸びるため、放っておくと肉球に刺さり、怪我をしてしまいます。特に猫ちゃんは、普段爪を隠しているため気付きづらいかもしれませんので、意識してチェックしましょう。

 

◯栄養バランスの取れた食事

皮膚のためにも、栄養バランスの取れた食事は大切です。ワンちゃんや猫ちゃんそれぞれに適した、品質の良いフードを食べさせてください。

 

皮膚は最大の臓器なので、臓器の中では最も栄養を必要とします。しかし実際に栄養が不足した場合、体は他の臓器を優先して栄養を供給するため注意が必要です。

 

ただし、栄養過多は肥満を招き、肥満は万病を招きます。肥満気味のワンちゃんや猫ちゃんにダイエットをさせる場合は、きちんと皮膚にも栄養が行き渡るよう、急激なダイエットは避け、動物病院と相談しながら、緩やかに理想体重・体型を目指すようにしましょう。

 

◯住環境の管理

湿度の管理も必要です。夏は熱中症予防のために湿度を意識されていても、秋冬はあまりチェックされない方もおられるようです。室内の湿度は50%前後におさまるよう、管理してください。

 

室内の衛生管理も大切です。ノミやダニの感染症でも皮膚は大きなダメージを負います。定期的な予防薬の投与と並行して、こまめな掃除も励行しましょう。

 

◯定期的な健康診断のすすめ

最後におすすめしたいのが、定期的な健康診断です。ワンちゃんや猫ちゃんも、若いうちは年に1回、シニア期に入ったら年に2回の健康診断を受けることで、皮膚も含めてさまざまな病気を早期に発見できます。また、日頃から気になることを相談する場にもなります。そして私たち獣医師は、診断結果からワンちゃんや猫ちゃんたちの生活習慣で見直した方が良い点等をアドバイスする場でもあります。ぜひ活用してください。

 

ポイント

食事をする猫

 

・皮膚は体内に病原体が侵入するのを防ぐ大切な役割(バリア機能)を担っています。

・犬や猫の皮膚は赤ん坊の皮膚より薄くデリケートです。

・寒くて乾燥する秋以降の関東地方では特にバリア機能維持のためのケアが大切です。

・犬と猫ではスキンケアの考え方が異なるため、それぞれに適したケアが必要です。

・犬のスキンケアは皮膚表面の雑菌の増殖を防ぐためシャンプーによる洗浄が大切です。

・猫のスキンケアは抜け毛の除去や血行促進のためのブラッシングが大切です。

・栄養バランスの取れた食事や住環境の整備、定期的な健康診断は共通して大切です。

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