犬の前十字靭帯断裂について｜後ろ足がおかしいと感じたら早めの受診を
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
前十字靭帯断裂とは、膝関節の内部にある前十字靭帯が切れてしまう病気です。大型犬に多いことが知られていますが、小型犬でも発症します。前十字靭帯断裂が起こると踏ん張りがきかずにうまく歩けなくなるため、お散歩中に後ろ足がおかしいと、気づく飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。一度切れてしまうと自然には治らないため、手術で膝の関節を安定させることが重要です。
今回は犬の前十字靭帯断裂について、その症状や治療法、予防法などをご紹介します。後ろ足の様子がおかしいと感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
目次
原因
前十字靭帯断裂の原因として様々な要素が考えられますが、特に影響を与えるのが加齢です。
年齢を重ねるにつれて前十字靭帯が徐々に劣化し、体重増加や激しい運動による負荷を受け止められなくなると、前十字靭帯が断裂したり損傷したりします。
そのため、大型犬（ラブラドール・レトリーバーやハスキーなど）あるいは肥満犬が中高齢になったときには注意が必要です。ただし、トイ・プードルやヨークシャー・テリアといった小型犬でも発症する場合があります。
また、若い小型犬では膝の関節が脱臼すること（膝蓋骨内方脱臼）が多く、それに伴って前十字靭帯断裂を発症すると考えられています。
症状
症状は、靭帯の損傷の程度や、関節あるいは軟骨へのダメージの有無によっても異なります。
一般的には、後ろ足を上げたままの状態にする（挙上）、後ろ足をかばって歩いている（跛行）、などの症状がみられます。
断裂して時間がたつといったん症状が治まることもありますが、そのままにしていても自然には治りません。適切な治療がなされないと、はじめは部分的な断裂であったものが完全な断裂まで進行してしまったり、関節軟骨（半月板）が傷つくことで変形性関節症を発症したりと、重症化する危険性があります。
さらに、最初は片足だけの断裂であっても、約50％の犬がもう片方の足も前十字靭帯断裂を起こしてしまうといわれています。
診断・治療
まず歩き方や座り方を観察して、後ろ足を引きずる程度や後ろ足の位置を確認します。あわせて整形学的検査を行い、膝の関節の動きを確かめます。前十字靭帯が断裂していると、座ったときに足を外に投げ出したり、後足を地面につけずに歩いたりします。
その後、レントゲンで関節周囲の目に見えない部分を評価して、治療法を検討します。
治療法として、痛み止めや体重管理といった内科療法もありますが、基本的には手術を実施して膝の関節を安定させることをお勧めします。
手術には、関節外固定術（ラテラルスーチャー法）や脛骨粗面前進化術、脛骨高平部水平化骨切り術（TPLO）など、様々な方法があり、犬種や重症度によって検討します。また、必要があれば術後にリハビリを実施して、歩くための筋肉をつけさせます。
最近は大学や専門医では小型犬でもTPLOが主流になってきているものの、当院では、小型犬にはラテラルスーチャー法、中～大型犬にはTPLOによる手術を行っています。
※小型犬でも希望される方ではTPLOが可能です。
TPLOによる手術が適用になる場合は、外部から執刀医を迎え、手術を行います。
■TPLOの手術をお願いしている執刀医のプロフィールはこちら
日本獣医生命科学大学助教 原田恭治先生
予防法
関節への負担を和らげるため、フローリングに滑りにくいマットなどを敷くこと、体重管理をして肥満を防止することが重要です。
加えて、前十字靭帯断裂はそのままにしておくと進行してしまうため、歩き方がおかしいと感じたら様子をみず、早めに動物病院を受診することをお勧めします。
ポイント
・前十字靭帯は一度切れてしまうと自然には治らないため、手術で膝の関節を安定させることが重要です。
・中〜高齢の大型犬に多いといわれていますが、小型犬でも発症します。
・後ろ足を上げたままにする、足を引きずるなどの症状がみられ、無治療の場合は変形性関節症を発症することもあります。
・膝の状態を身体検査やレントゲンなどで確認し、犬種や重症度にあわせて治療法を検討します。
・関節に負担をかけないために、滑りにくい床にすること、体重管理をして肥満を防止することが重要です。
横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院
＜参考文献＞
The epidemiology of cruciate ligament rupture in an insured Swedish dog population – PMC (nih.gov)
