犬の膀胱結石について┃重篤な疾患に繋がる危険性も…
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
膀胱結石とは、様々な理由で膀胱に石がたまってしまう病気のことです。腎結石や尿管結石が移動して膀胱に入った状態も膀胱結石と呼ばれます。また、飼い主様が愛犬の頻尿に気付き動物病院を受診し、膀胱炎と診断された後、抗生物質を投与されても症状が改善せず、レントゲン検査を行ったところ膀胱内に石が見つかるケースも多くみられます。
今回は犬の膀胱結石について、その原因や症状などを解説するとともに、当院での治療の進め方に関してもご紹介します。
原因
犬の膀胱結石の原因は様々ですが、その中でも尿のpHが重要になります。
通常、犬の尿のpHは6〜6.5程度ですが、酸性を示すミネラル (リン、塩素、硫黄など)やアルカリ性を示すミネラル (ナトリウム、カルシウム、カリウムなど)を多く含んだ食事などの影響を受けて尿のpHは変動します。
最近ではドッグフードの改善により、ドッグフードが原因の膀胱結石は以前よりも減少しています。
また、尿のpH以外の要因としては、膀胱結石になりやすい体質を持っていることや膀胱炎、尿の滞留などがあげられます。
膀胱結石の種類
犬の膀胱結石はストルバイトかシュウ酸カルシウムのどちらかである場合が多く、全体の8~9割を占めます。
・リン酸アンモニウムマグネシウム (ストルバイト)
尿のpHがアルカリ性に傾くと発生します。特にメスの犬ではウレアーゼ産生細菌の感染が大きく関与していると考えられています。
・シュウ酸カルシウム
尿のpHが酸性に傾くと発生します。シュウ酸カルシウムは結石摘出後、専用のご飯を食べていても再発を繰り返すことが多いのが特徴です。
症状
膀胱結石の主な症状は以下の通りです。
・頻尿
・血尿
・尿失禁や尿漏れ
・排尿時の痛み (排尿時に苦しそうに鳴く)
一方で、膀胱結石の大きさによっては、ほとんど症状が現れないこともあります。
結石の大きさによっては尿道閉塞となり、急性腎障害や尿毒症などの重篤な疾患に繋がる危険性もあります。突然、尿が出なくなって元気や食欲が低下したり嘔吐をする場合は速やかに動物病院を受診してください。
診断方法
・尿検査
飼い主様に持参していただいた尿や膀胱に針を刺して採取した尿を検査し、細菌感染及び結晶の有無やpH、潜血などを評価します。
・レントゲン検査
膀胱内に結石がないかを調べます。結石があればレントゲン上で白く映りますが、結石が小さい場合は映らないこともあります。
・腹部超音波検査
膀胱内部の状態をリアルタイムで評価します。レントゲンでは見つけることができない小さい結石でも発見することができ、膀胱結石の診断において有効な検査法です。
その他、全身状態や腎障害の有無を評価するために血液検査も行います。
治療方法
膀胱結石は手術で摘出します。
ストルバイトは食事療法で溶かすことが出来ますが、大きさによっては手術が適応になります。
また、摘出して結石の成分を分析することで治療方針が確定します。
結石があることで、慢性膀胱炎が治癒しづらくなるため、早期に改善することが重要です。
加えて、手術で結石を摘出したとしても、以前と同じ食生活に戻れば再発する恐れがあるため、食事の改善は必須です。
予防法
膀胱結石を予防するには、ドッグフード以外の食事を食べさせない、日頃から十分な水分摂取量を確保する、排尿を我慢させないことが重要です。
また、普段から犬の尿の状態や排尿時の様子を注意深く観察し、異変を感じたらすぐに動物病院を受診してください。
定期的に尿検査を含めた健康診断を受けることも非常に大切です。
まとめ
・犬の膀胱結石はストルバイトかシュウ酸カルシウムのどちらかである場合が多く、全体の8~9割を占めます。
・シュウ酸カルシウムは結石摘出後、専用のご飯を食べていても再発を繰り返すことが多いのが特徴です。
・手術で結石を摘出することが、治療の基本となります。
・結石の大きさによっては尿道閉塞となり、急性腎障害や尿毒症などの重篤な疾患に
繋がる危険性があります。
・膀胱結石を予防するため、日々の食事管理と定期的な健康診断が重要です。
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