犬の股関節形成不全について|座り方や歩き方が変? 治療には手術が必要なことも

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

大型犬に多い病気の1つに、股関節形成不全が挙げられます。この病気を発症した犬は、座り方や歩き方に特徴があるため、異変に気づき来院される場合もあります。
また治療には手術を含めて様々な選択肢があるため、犬の状態をよく見極めて飼い主様とご相談したうえで、方針を定める必要があります。
今回は股関節形成不全について、その原因や症状などを解説するとともに、当院での治療の進め方に関してもご紹介します。

原因

股関節形成不全は、遺伝要因と環境要因の2つによって発症すると考えられています。

遺伝的に発症しやすいといわれている犬種には、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなど大型犬によくみられますが、柴犬やトイ・プードルなど、国内で人気の高い小型犬でも認められます
生まれたばかりの時点では正常な股関節であっても、生後数週のうちに関節に変化があらわれてきます。

また環境要因として、偏った栄養により骨が正常に成長しないことや肥満、激しい運動、あるいは滑りやすい床などによる関節への負担が挙げられます。

症状

症状は、1歳未満の若い時期に起こるものと、2~12歳の大人になってから起こるものに分けられます。

若いときには、股関節が緩むことで腰を振るような歩き方(モンローウォークと呼びます)や、後ろ足を投げ出したような座り方(いわゆるお姉さん座り)がみられるのが特徴的です。

症状が進行すると、関節や靭帯に炎症や損傷が生じ、歩行時の痛みやお散歩を嫌がる、両方の後ろ足でぴょんぴょんとうさぎのように跳ねて歩くなどの動きが見られることもあります。
こうした症状は、成長とともに関節が再構築されることでいったんは治まりますが、治ったわけではないため、加齢とともに再び症状が現れます。

診断

歩き方や座り方の異常が股関節形成不全によるものかどうかを調べるため、整形外科学的検査を実施します。
あわせてレントゲンを撮影することで、どの程度関節が緩んでいるのかをより詳細に評価します。

治療

股関節形成不全の治療は、保存療法と外科療法(手術)に分けられます。

保存療法では、食事制限による体重管、運動の制限、消炎鎮痛剤の投与などが行われます。こうした治療で症状をコントロールできない場合は、手術を検討します。

手術には、予防的治療と救済的治療があり、前者では将来的に骨関節炎が起こる可能性が高い犬に対して、若齢期恥骨結合固定術、二点または三点骨盤骨切り術などを実施します。
一方で大人の犬では、変形性関節症という別の病気を伴って関節に痛みが生じる場合があり、そういった症例に対しては、大腿骨頭切除術、人工股関節全置換術、人工靭帯再建術といった救済的手術を検討します。

なお、当院の場合は救済的治療において、大腿骨頭切除術を実施しています。
上記の通り様々な治療法が存在する中で、当院では動物の年齢や状態、飼い主様のご意見なども踏まえたうえで、動物のQOL(生活の質)を維持できる一番よい方法をご提案しています。

変形性関節症についてはこちらのブログで解説しています

予防法

好発犬種と一緒に暮らしている場合は、関節に負担がかからないような環境を整備していただくと予防につながります。変形性関節症の記事でも述べましたが、ご家庭ではフローリングを滑りにくいものにする、階段部分にスロープをつける、適度な運動で筋肉を保つ、肥満を防止する、といったことを意識してみましょう。

ポイント

・股関節形成不全は大型犬に多いものの、小型犬で発症することもあります。
・遺伝と環境といった2つの要因で発症します。
・症状は若い時期と大人になってからの2つに分けられ、特徴的な歩き方や座り方がみられます。
・治療には保存療法と手術の選択肢がありますが、動物の状態などを考慮して、より適切なものを判断する必要があります。
・関節に負担がかからない環境をつくってあげることが予防につながります。

 

横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院

 

<参考文献>
Diagnosis, prevention, and management of canine hip dysplasia: a review – PMC (nih.gov)

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