犬の変形性関節症について│リブレラで症状の緩和が期待できます
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
犬に多い病気の1つに変形性関節症が挙げられます。関節軟骨の変性によって痛みが出るため、お散歩に行きたがらない、あるいは足を引きずるといった様子に飼い主様が気づき、来院されることが多い病気です。基本的には生涯にわたって治療を続ける必要がありますが、早期に治療を始めることで病気による痛みを最小限に軽減できます。
今回は犬の変形性関節症について、その原因や症状をお伝えするとともに、当院での治療をご紹介します。
原因
変形性関節症には様々な原因が挙げられます。先天的な要因として、遺伝(バセット・ハウンド、ブルドッグ、シェパードなどの犬種)による影響が知られています。
また後天的な要因として、関節のケガ、過剰な運動による関節の消耗、肥満、加齢、関節に影響するその他の病気(肘あるいは股関節形成不全など)などが考えられます。いずれにせよ、関節に負担がかかることがきっかけで、関節軟骨が変性して痛みを生じます。
症状
関節の痛みにより、運動機能に影響が現れます。初期には、歩きたがらない、段差の昇り降りを嫌がる、足をかばうように歩く、足を引きずる、などの症状がみられます。また、関節に液体(関節液)が貯まることで腫れることもあります。時間の経過とともに病気は進行していくため、治療をせずにいると徐々に症状が悪化してしまいます。
診断
ご家庭で歩く様子などをお伺いするとともに、身体検査やレントゲンを実施して診断に結び付けます。レントゲンでは、関節周囲の線維化、軟骨の硬化、関節液の貯留などが観察されます。さらに他の関節の病気(感染性の関節炎や関節リウマチなど)と区別するために関節に針を刺し、関節液を一部採取して細胞を観察することもあります。
治療
変形性関節症の重症度によっても異なりますが、治療の選択肢としては主に内科療法が挙げられます。一般的には、痛みを抑える薬(非ステロイド性抗炎症薬など)や関節軟骨を保護するサプリメントなどを処方するとともに、関節に負担がかからないように体重をコントロールします。
なお当院では関節の痛みを和らげるため、非ステロイド性抗炎症薬に加えて、リブレラという注射薬を用いており、メリットとしては以下の4点が挙げられます。
1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と同等以上の鎮痛効果が期待される
現時点でリブレラとNSAIDsを直接比較した試験はないものの、臨床試験ではリブレラの高い鎮痛効果が期待されています。
また、治療薬間の有効性を比較する数値では、リブレラがNSAIDsと比較して、高い効果量を計測しているというデータも存在しています。
参考1),2)
• (人の報告)NSAIDs :効果量※ <0.3
• (人の報告)抗NGF抗体薬 :効果量 0.3-0.7
• (犬の報告)リブレラ :効果量 0.38-0.73
※効果量(Effect size):治療薬間の有効性を比較する方法の一つで、数値が高いほど有効性が高いことを示す
出典:
1)Malek S, et al. (2012). Effect of analgesic therapy on clinical outcome measures in a randomized controlled trial using client-owned dogs with hip osteoarthritis.BMC Vet Res, 8:185.
2) Lascelles BDX, et al. (2015). A canine-specific anti-nerve growth factor antibody alleviates pain and improves mobility and function in dogs with
degenerative joint disease-associated pain. BMC Vet Res, 11:101.
2.投与は月に一度の注射だけで、毎日の投薬が必要ない
リブレラは月に一度注射を行うだけで投薬が完了するため、毎日の投薬が必要な治療薬と比較しても飼い主様への負担が少ないと言えます。
3.細胞内に入って作用するNSAIDsとは異なり副作用が極めて少ない
リブレラはNGFと呼ばれる痛みの伝達物質をブロックすることで痛みに対する感度を抑える治療薬です。そのため、細胞内に入って作用するNSAIDsとは異なり副作用が極めて少ないという検証結果が存在しています。
出典:
https://www2.zoetis.jp/species/dogs/oapain/librela/vets/outline#index1
4.1回目より2回目、3回目の方がより治療成功率が高い
リブレラは長期間の継続投与により高い治療効果が維持され、1回目より2回目、3回目の方がより治療成功率が高いというデータがあるため、継続的な治療に向いています。
出典:
Maria J Corral. et al. A prospective, randomized, blinded, placebo-controlledmultisite clinical study of bedinvetmab, a caninemonoclonal antibody targeting nerve growth factor, in dogs with osteoarthritis. Veterinary Anaesthesia and Analgesia 2021. 48. 943-955.
予防法
関節への負担を減らすために、ご家庭ではフローリングを滑りにくいものにする、階段部分にスロープをつける、適度な運動で筋肉を保つ、太らせないようにする、といったことを意識してみましょう。
ポイント
・変形性関節症は関節軟骨の変性によって痛みが出る病気です。
・変形性関節症の症状としては、初期には、歩きたがらない、段差の昇り降りを嫌がる、足をかばうように歩く、足を引きずる、などの症状がみられ、関節に液体(関節液)が貯まることで腫れることもあります。
・当院の内科療法では関節の痛みを和らげるため、リブレラという注射薬を用いています。
・リブレラはNSAIDsと同等以上の鎮痛効果が期待でき、月に一度の注射だけで投薬が完了するため飼い主様への負担が少なく、副作用も極めて少ないという検証結果も出ており、1回目の投薬時より2回目、3回目の方がより治療成功率が高いため継続的な治療に向いています。
・変形性関節症を予防するには関節への負担を減らすために、ご家庭ではフローリングを滑りにくいものにする、階段部分にスロープをつける、適度な運動で筋肉を保つ、太らせないようにするといった取り組みが重要です。
当院の整形外科への取り組みについては、こちらのページでも解説しています
横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院
<参考文献>
Face validity of a proposed tool for staging canine osteoarthritis: Canine OsteoArthritis Staging Tool (COAST) – ScienceDirect
Proposed Canadian Consensus Guidelines on Osteoarthritis Treatment Based on OA-COAST Stages 1–4 – PMC (nih.gov)
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