猫の甲状腺機能亢進症について┃食欲が増える一方で体重が減少してきたら…
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺の機能が過剰に活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。人間の「バセドウ病」としても知られています。甲状腺ホルモンは自律神経の調節や新陳代謝、エネルギー消費などに関与しているため、甲状腺機能亢進症になると全身に様々な症状が現れます。
今回は、猫の甲状腺機能亢進症の原因や症状、診断、治療方法などを詳しく解説します。
症状
猫の甲状腺機能亢進症の主な症状は以下の通りです。
・多飲多尿
・食欲が増える一方で体重が減少
・攻撃性が増したり活動的になる
・毛並みの悪化
・下痢や嘔吐
・心拍数の増加
・高血圧
症状が進行すると、持続的な高血圧により網膜剥離や網膜出血などが見られることもあります。
また、甲状腺機能亢進症の併発疾患として肥大型心筋症を発症することが多く、心筋症による胸水や肺水腫などで呼吸困難が見られることがあります。
原因
甲状腺はサイロキシン (T4)やトリヨードサイロニン (T3)という甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺の結節性過形成(細胞が結節状に増殖する)、腺腫(良性腫瘍)、腺癌(悪性腫瘍)などが原因で、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰に増加すると甲状腺機能亢進症になります。
特に、8〜10歳以上のシニア猫に多く発生します。
また、遺伝的な原因や食品中の添加物、環境中の化学薬品なども関与していると考えられています。
診断方法
甲状腺機能亢進症の診断には、主に以下の検査を行います。
・身体検査
健康状態や甲状腺の腫れを確認します。
・甲状腺ホルモン検査
T4濃度や血中遊離サイロキシン濃度 (fT4)を測定します。
・超音波検査
甲状腺の大きさや形を確認します。
他にも全身状態を把握するために血液検査やレントゲン検査も行います。
治療方法
治療法には以下の選択肢があります。
①内服薬による治療
メチマゾールなどの薬を使用し、甲状腺ホルモンの分泌を抑えます。定期的な血液検査でホルモンレベルをモニターしながら調整します。
②外科治療
甲状腺の一部または全部を手術で摘出します。
③ヨウ素制限食を用いた食事療法
内科治療と併用します。
一般的には内科治療が基本で、内科治療で症状をコントロールできない場合や転移が見られない甲状腺癌の場合は外科治療を選択します。外科治療後は医原性甲状腺機能低下症や低カルシウム血症を発症することがあるため、術後管理には注意が必要です。
予後と管理
甲状腺機能亢進症は内科治療を継続することで良好な予後が期待できます。内科治療が奏功せずに外科治療を選択した場合も、術後の合併症を予防できれば同様に予後は良好です。
治療は生涯にわたって継続することが重要で、定期的に甲状腺ホルモン濃度をモニタリングすることで、適切な管理が可能となります。
また、普段の生活では、食欲や体重の変化、水を飲む量やトイレの回数を確認することを心がけましょう。
予防法
残念ながら、甲状腺機能亢進症の効果的な予防法はありません。
そのため、シニア期に差し掛かったら定期的に甲状腺ホルモン検査を含めた健康診断を受け、病気の早期発見・早期治療を行うことが重要です。
また、猫にできるだけストレスをかけず、常に良質なフードと新鮮な水を用意して健康を維持することも大切です。
当院では猫の健康診断キャンペーンを実施中です。甲状腺機能亢進症を含めた様々な疾患の早期発見に繋がる可能性がありますので、ぜひこの機会に健康診断をご検討ください。
まとめ
・猫の甲状腺機能亢進症はシニアの猫に多く発症する病気です。
・甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、多飲多尿や体重減少、食欲亢進などの様々な症状が現れます。心筋症の併発も多いです。
・治療は抗甲状腺薬や食事療法による内科治療が一般的です。
・定期的な健康診断を受け、普段から猫の健康状態をよく観察し、病気の早期発見・早期治療を行うことが重要です。
・猫の様子に違和感を覚えたり、食欲はあるのに痩せていくなどの症状が見られれば、すぐに動物病院を受診してください。
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