歩き方の変化も健康管理のバロメーターです

犬猫の病気や症状

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

愛犬と一緒に散歩をしている時や何気なく愛猫の様子を見ている時に、「歩き方がなんだかいつもと少し違うな」と感じることがあったら、それは裏に病気が隠れているのかもしれません。

 

実は、歩き方を変えてしまう要因には様々なものがあります。怪我をしている様子はないし、歳を取ったので仕方がないと思ってそのままにしていると、知らぬ間に病気を進行させてしまうこともあります。

 

今回は、愛犬や愛猫の歩き方をおかしくさせる原因や、代表的な病気についてお話ししたいと思います。

 

 

歩き方がおかしいかどうかを知るためには、正常な歩き方を知っておく必要があります。ただし、犬の場合も猫の場合も、普通に歩いている時、少し早足の時、かなり早足の時、軽く走っている時、全速力で走っている時など、その時々で足運びや体の状態が異なります。

 

普段から、愛犬や愛猫が歩く姿をよく観察しておくと、愛犬や愛猫の歩き方の変化にすぐに気付けるでしょう。できれば、普通に歩く様子、早足の様子、走っている様子などのいくつかのパターンを動画に記録しておくと、いざという時にじっくりと確認できるので安心です。

 

雪や砂の上についた足跡を見ると、猫の場合は足跡が一直線に並んでいることがわかります。これは、前足と後ろ足をつく場所が同じだから起こる現象です。小物がたくさん置いてある棚の上を、猫が小物を落とさずに上手に歩くことができるのも、この歩き方のおかげです。犬も前足と後ろ足を同じ場所につくのですが、猫のようにピタリと一致するほど正確ではなく、また左右に少し幅もあるため、きれいな一直線にはなりません。ちなみに、ファッションモデルが細いランウェイを一直線に歩くのをキャットウォークと呼ぶのは、猫の歩き方に由来しているのだそうです。

 

 

犬や猫が普通に歩く場合、少なくても2本以上の足が接地していて、体が中に浮いている瞬間はありません。足運びは、右後ろ足→右前足→左後ろ足→左前足というような順序になり、片側の後ろ足と前足がペアリングされています。

 

歩く速度が速くなるにつれて、後ろ足と前足の接地タイミングが近づいていき、同時になります。その場合、地面を蹴った後に一瞬体が中に浮くようになります。さらに速くなると、連動する足のペアリングが左前足と右後ろ足、右前足と左後ろ足に変わります。

 

走る場合には、連動する足のペアリングが両後ろ足、両前足に変わり、後ろ足で地面を蹴り、前足で着地するようになります。そして、全速力で走る場合は、前足でも地面を蹴るようになります。

 

いずれの場合も、しっかりとした足取りで目標に向かって真っ直ぐによろけることなく進んでいきます。しかし、下記のような状態の場合は、歩き方が異常であると考えましょう。

 

・歩く速度がとても遅い

・普通に足をついて歩いてはいるが、よろけたりふらついたりしている

・ふらつきがひどく、真っ直ぐに歩けない

・特定の足を引きずりながら歩いている

・特定の足を地面につけないように上げたまま歩いている

・物にぶつかりながら歩いている

・足を必要以上に高く上げて歩いている 等

 

 

歩き方がおかしくなる原因には、足の怪我の他に、骨や関節の疾患、脳神経系の疾患、心因性の疾患等が考えられます。様々な原因が考えられますので、歩き方の状態をよく観察し、いくつかの検査を行なって原因を究明した上で、必要な治療を行います。

 

病気ではなく、老化による筋力の低下が原因という場合もあります。その場合は、犬や猫の状況に応じたリハビリテーションやマッサージ等を行うことで、状態の改善や進行の抑制を図る場合もあります。また視力が低下して、よく見えていないために歩き方がおかしいという場合もあります。

 

では、歩き方が異常な場合に疑われる、主な病気について簡単にご紹介しておきましょう。

 

(1) 膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

膝関節のお皿の骨が、正しい位置からずれてしまう病気です。先天性と後天性があり、後天性の場合は打撲や高所からの落下などで強い外力がかかったことが原因で発症します。猫はクッション性に優れた体の構造をしているためあまり発症数は多くなく、先天性の場合が多いようです。ペルシャ、スコティッシュ・フォールド、メインクーンが好発品種です。犬の場合はどの犬種にも発症しますが、トイプードル、チワワ、ポメラニアン、ヨークシャテリア、パピヨンなどの小型犬に多く発症する傾向があります。

 

足を痛がる、足を引きずって歩く、スキップまたはケンケンするように歩くといった症状がみられます。猫の場合は高いところに上らなくなります。進行は4つのグレードで表され、軽い場合はお皿の骨が自然に正しい位置に戻り、歩き方も元に戻ります。しかし、膝蓋骨脱臼は繰り返すので、初期の段階できちんと治療することが望ましいです。グレードが進み、痛めた足を上げるなどの症状が強く出てくると、手術が必要になります。

 

膝蓋骨脱臼や骨折について、当院ホームページ「診療科目」の中の「整形外科」の項目で詳しくご説明していますので、興味をお持ちの方はぜひご参照ください。

<https://tsuda-vet.com/seikei/>

 

(2) 椎間板ヘルニア

背骨の椎骨と椎骨の間には、椎間板と呼ばれている軟骨があり、クッションのような役割をしています。この椎間板が変形し、正しい位置から飛び出したような状態になる病気です。椎間板が飛び出すと骨髄を圧迫するため、様々な神経症状が出てきます。交通事故や高所からの落下による外圧や肥満による背骨への過負荷、加齢によるコラーゲンの減少等が原因になります。特にミニチュアダックスフンド、シー・ズー、ウェルシュ・コーギー、フレンチブルドッグ、トイプードル等のように、若齢時に軟骨の変性を起こしやすい軟骨異栄養犬種と呼ばれる犬種に発症が多くみられます。

 

後ろ足に力が入らない、後ろ足が動かない、ふらつく、抱き上げると鳴く(痛さのため)、動きたがらない、排泄がうまくできないといった症状がみられます。椎間板ヘルニアには5つのグレードがあり、徐々に進行していきます。早期に発見すれば手術せずに治療可能ですので、愛犬や愛猫の様子をよく観察し、早く痛みに気付いてあげられるようにしてください。

 

椎間板ヘルニアについて、当院ホームページ「診療科目」の中の「神経外科」の項目で詳しくご説明していますので、興味をお持ちの方は是非ご参照ください。

<https://tsuda-vet.com/sinkei/>

 

(3) 前庭疾患

前庭とは耳の奥にある内耳の一部で、三半規管と共に平衡感覚を司っている器官です。前庭や三半規管が信号を出し、脳幹がそれを受信することで、体の平衡感覚が保たれます。何らかの原因により前庭・三半規管・脳幹が機能しなくなり、平衡感覚を保てなくなるのが前庭疾患です。前庭疾患の原因は、脳腫瘍、脳炎、内耳炎、外傷、耳の中の腫瘍など様々です。

 

真っ直ぐ歩けない、ぐるぐる回る、頭を常に傾けている、黒目の部分がしきりに動く、歩けず倒れるといった症状がみられます。私たちも目が回るとうまく歩けなくなりますが、あの状態がずっと続いていると考えれば理解しやすいかもしれません。

 

 

異常な歩き方といっても様々なパターンがあります。原因によって、様々な症状が現れるからです。できるだけ早く原因を究明するためには、やはり飼い主様によく観察して頂き、普段とどう違うのかを説明して頂くことが重要です。そのためにも、ぜひ普段から、愛犬、愛猫の様子を観察する習慣をつけてください。

 

また、具体的にどこがおかしいと説明できない場合もあると思います。それでも、飼い主様の「違和感」は重要だと考えています。少しでもおかしいなと感じた場合は、動物病院にご相談ください。言葉でうまく説明できない場合は、動画撮影による記録も上手に利用してください。

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