気をつけたい愛犬・愛猫の低温やけど

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怖い犬猫の低温やけど

被毛に覆われている犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

冬になると、どうしても寒さを凌ぐために電気アンカやカイロなどを懐に忍ばせたり腰などに貼ったりして、暖をとられる方も多いと思います。同じように、一緒に暮らしているワンちゃんや猫ちゃんにも、いろいろな暖房器具を利用して、防寒対策をされると思います。

 

人間の場合も、電気アンカやカイロには、「ご使用に際して、低温やけどに気をつけましょう!」などという注意書きが書かれていると思います。実は、ワンちゃんや猫ちゃんも同じなのです。

 

私達人間の身体も、表面を体毛が覆っています。しかし、犬や猫の被毛とは比べ物になりません。あのモフモフの被毛は、ワンちゃんや猫ちゃんの身体を守っている大切なものなのですが、逆に熱さが伝わりづらいという欠点もあるのです。

 

しかも低温やけどなので、原因となる熱源は低温です。本人たちも気付かないままやけどになっており、気付いたら重症化していたということも、決して少なくないのです。

 

浅いやけどは痛みが強く、深いやけどは治るまでに時間がかかります。また、体表面積の2割を超える深いやけどの場合や、体表面積の半分以上の皮膚が欠損してしまうようなやけどの場合は、感染による敗血症を起こして亡くなってしまう可能性もあるのです。決して馬鹿にできないのがやけどなのです。

 

低温やけどの原因

湯たんぽ

 

改めて、低温やけどについてご説明しましょう。低温やけどとは、体温よりも少し高い温度の熱源に、身体の同じ部位が長時間接触することで起こるやけどのことです。犬や猫の場合は、だいたい44℃〜50℃程度です。私達が入るお風呂の温度が約40℃ですので、一般的にはやけどが起こるとは思えない温度だと考えて良いでしょう。

 

熱源は、固体に限りません。液体や気体でも同じです。具体的に気を付けていただきたい暖房器具を挙げると、ホットカーペット、ペットヒーター、こたつ、湯たんぽ、ストーブなどです。これらの熱源に、ワンちゃんや猫ちゃんの身体が長時間、直接接触または接近しすぎることで、低温やけどが起こります。

 

ちなみに人間の場合でも、44℃の熱源に3〜4時間、46℃の熱源に1時間程度の間、継続的に接触していると低温やけどになると言われています。

 

やけどのレベル(ひどさ)は、熱源の温度と、その熱源に接触していた時間を掛け合わせて決まると考えて良いでしょう。つまり、熱源の温度が低くても、長時間接触していればどんどん重症化していくのです。

 

ここで注意していただきたいのが、ワンちゃんや猫ちゃんの全身を覆っている被毛です。被毛は彼らの皮膚や身体を守っていますが、前述の通り、ワンちゃんや猫ちゃんに熱を伝えづらくします。しかし、もう一つマイナス面があるのです。それは、飼い主様が彼らの皮膚の異変に気付きづらくなるという点です。

 

日頃からワンちゃん、猫ちゃんの皮膚のチェックは大切ですが、特に暖房器具を使用する時期にはこまめに、そして念入りに皮膚をチェックするように心掛けると良いでしょう。

 

低温やけどの症状と治療

ストーブの前に座る犬

 

低温やけどは、その症状のレベルから下記の4つに分類できます。

 

<Ⅰ度熱傷>

軽いやけどです。皮膚が赤くなりヒリヒリしますが、痕も残らず数日で完治することが多いです。

 

<浅達成Ⅱ度熱傷>

水ぶくれができ、ひどい痛みを感じます。ワンちゃんや猫ちゃんが同じ部位を気にして舐め続けている、または特定の場所を触ると嫌がるような場合は、このレベルの低温やけどの可能性があります。治るまでには1〜2週間が必要です。

 

<深達成Ⅱ度熱傷>

真皮の深い部分までやけどが到達しています。皮膚の壊死や神経の損傷により、感染症を起こす可能性もある危険な状態です。神経が損傷されている場合は、痛みを殆ど感じられなくなっています。治るまでには1ヶ月程度の期間が必要になり、痕が残ることも多いです。

 

<Ⅲ度熱傷>

やけどが皮下組織にまで及んでしまい、神経や血管も損傷している重症な状態です。神経が損傷しているので、ほとんど痛みを感じていません。治療には1ヶ月以上が必要になります。皮膚がケロイド状になってしまった場合は、皮膚の移植手術を行う場合もあります。

 

やけどは、軽症でも時間が経つと範囲が広がり重症化することがあります。流水や氷嚢、保冷剤などを利用して患部を冷やし、清潔な状態にしてすぐに動物病院につれてきてください。

 

低温やけどの予防

ドーム型ハウスで休む猫

 

ワンちゃんや猫ちゃんを低温やけどにさせないためには、下記の点に注意をして防寒対策を行うと良いでしょう。それぞれのご家庭の事情により、最も適した方法を選び、大切なパートナーをリスクの少ない方法で防寒してあげてください。

 

・湯たんぽなどを使用する場合は、直接体が触れないように、専用のカバーを利用したり毛布やタオルなどを巻いたりしてから使用する

 

・ホットカーペットやペット用ヒーターを使用する場合は、直接上に乗せずにマットや毛布を敷いておく

 

・こたつは時々布団をめくって温度を下げる

 

・愛犬・愛猫が自ら熱源のそばを離れない場合は、飼い主様が強制的に移動させる

 

・ホットカーペットの温度は38℃程度に設定する

 

・サークルやケージなど、狭い場所でペット用ヒーターなどを使用する場合も、必ず温められていないスペースができるようにしておく(自分で熱さから逃げられるようにしておく)

 

・老齢や幼齢で、あまり動けずに長時間同じ寝床で過ごす場合は、電気を使わない温かい寝床(ペット用ベッドや毛布などの活用)とエアコンによる防寒を行う

 

・エアコンを使用できない場合は、温かい寝床と最も寒い時間帯に3時間程度で切れるようにタイマー設定した電気ヒーター等の組み合わせで防寒を行う

 

・ストーブを利用する場合は、その周囲を柵等で囲って熱源に近寄れないようにする

 

ポイント

一緒に温まる犬と猫

 

ポイント

・44℃〜50℃程度の熱源に長時間触れていると、低温やけどになるリスクが高い

・愛犬や愛猫がやけどをしても、被毛で飼い主様も気付きづらいので注意が必要

・軽度〜中程度のやけどの場合は痛みを伴うため、行動から察知できる

・重度のやけどの場合は痛みを感じないため、行動からは察知しづらい

・愛犬愛猫の防寒対策は、使用する暖房器具それぞれの使用方法や特徴をよく理解して対策を施す

・できれば寝床とエアコンでの防寒対策が安心

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