愛犬・愛猫に腫瘍が見つかったら┃早期発見と治療法について獣医師が解説

犬猫の病気や症状

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

愛犬・愛猫の体に腫瘍が見つかったとき、その不安はとても大きいですよね。ふだんは元気でも、しこりや腫れを発見した瞬間、「うちの子、大丈夫かな?」と頭が真っ白になってしまうこともあると思います。

 

しかし近年では、獣医療の進歩によりCT検査などの高度な画像診断が可能になり、腫瘍の大きさや位置をより正確に把握できるようになりました。特に80列マルチスライスCTを使えば、今までわかりにくかった小さな腫瘍でも早期に発見できる可能性が高まります。診断が早ければ早いほど、治療の選択肢も増え、完治や延命の期待が高まります。

 

この記事では、腫瘍の早期発見のポイントと、当院が取り組む最新の診断技術についてわかりやすくご紹介します。

腫瘍の早期発見のために大切なこと

愛犬・愛猫の健康を守るには、日々の観察が欠かせません。飼い主様が気をつけて見ていただきたい主なサインには、次のようなものがあります。

 

しこりや腫れ
体に触れたときに、今までなかったコブや小さなしこりを感じたら、なるべく早めに獣医師へご相談ください。

 

咳や呼吸の変化
肺の腫瘍などが原因で、慢性的な咳や息苦しさを起こすことがあります。

 

食欲不振
口腔内や消化器系の腫瘍がある場合、噛む・飲み込むなどがつらくなり、ごはんを嫌がることがあります。

 

体重の減少
短期間で体重が大きく落ちたら、腫瘍を含む重い病気が進行している可能性があります。

 

元気の低下
なんとなく元気がない、活発に動かない、というときは倦怠感を伴う病気のシグナルかもしれません。

 

これらの症状は初期段階ではほとんど目立たない場合もあるため、定期検査を受けることがとても大切です。異常が出てから病院へ行くのではなく、健康なときから診察や検査をしておくことで、病気の早期発見と早期治療が期待できます

 

関連記事:愛犬、愛猫の健康管理に検査が重要な理由

最新の診断技術について

腫瘍を早期に見つけるには、レントゲンや超音波といった従来の検査だけでなく、CT(コンピューター断層撮影)が非常に有効です。CT検査では、体内を断面ごとに撮影していくため、レントゲンや超音波では見落としやすい小さな腫瘍や隠れた病変を捉えることができます。

動物病院に設置されたCTスキャナー(キャノン製 Aquilion)の写真。検査台と装置の円形部分が写っている

当院では、80列マルチスライスCTを導入しています。これは従来のCTよりも高精度・高速で撮影できるため、愛犬や愛猫への負担をできるだけ軽くしつつ、腫瘍の位置・大きさ・転移状況などを正確に把握できます。

 

関連記事:横須賀の動物病院で受けられる!80列CTで発見できる犬猫の病気

 

従来の検査(レントゲン・超音波)との比較

・レントゲン検査
骨や肺などを大まかに確認するのに適していますが、腫瘍の詳細な状態はわかりにくいことがあります。

 

・超音波検査
お腹の中の臓器をリアルタイムで観察できますが、骨やガスの影響で見づらい部位があるのが難点です。

 

・CT検査
体内を断面画像で撮影するため、腫瘍の形や大きさ、周囲組織との関係などをより詳細に把握できます。外科手術の計画や、放射線治療の適応を判断する際にも役立ちます。

 

遠隔読影VINシステムの活用

当院では、VIN(Veterinary Information Network)システムを活用した遠隔読影を行っています。画像診断の専門医にオンラインでCT画像を解析してもらうシステムです。専門医の意見を取り入れることで診断の精度が高まり、飼い主様にも納得していただける治療方針をご提案できます。

 

早期診断が可能になると…

腫瘍が小さいうちに発見できれば、手術・放射線治療・抗がん剤治療など多様な選択肢が広がり、完治や長期的な管理が期待できます。逆に進行してしまうと治療自体が難しくなる場合も多いため、やはり“早期診断”がとても大切です。

腫瘍の種類と最新の治療法

犬や猫に発生しやすい腫瘍には、以下のようなものがあります。

 

皮膚腫瘍
発見しやすいものが多いですが、なかには進行の早い悪性黒色腫(メラノーマ)もあります。悪性の場合は、早期の外科的切除や化学療法などを検討します。

 

乳腺腫瘍
特に未避妊の雌犬・雌猫でリスクが高く、悪性であることも多いです。手術での切除が第一選択となる場合が多く、発見が早ければ予後も良好なケースが見込まれます。

 

関連記事:犬と猫の乳腺腫瘍について┃避妊手術で予防ができる

 

リンパ腫
免疫を担うリンパ組織から発生するがんの一種です。抗がん剤治療が主流で、早期に治療を始めることで寛解(症状がおさまる状態)を目指せる場合があります。

 

骨肉腫
特に大型犬に多く見られ、強い痛みを伴うのが特徴です。外科的切除や断脚、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて治療を行います。

 

関連記事:犬の骨肉腫について┃進行スピードが早く、転移も多い病気

 

口腔内腫瘍
口の中や歯ぐきにできる腫瘍で、進行すると食事が取りづらくなり生活の質(QOL)が低下します。手術や放射線治療が中心となります。

治療法の例

手術(外科的切除)
腫瘍の完全切除を目指す最も直接的な方法です。切除可能な段階なら、なるべく早い時期に手術を行うことで再発リスクを下げられます。

 

放射線治療
腫瘍細胞を死滅・縮小させるために放射線を照射します。手術が困難な場所や、手術後に残った腫瘍に対して行われる場合もあります。

 

化学療法(抗がん剤)
腫瘍の種類や動物の体調に応じて、内服・注射などで抗がん剤を投与し、腫瘍の増殖を抑制します。

 

免疫療法
まだ新しい治療法ですが、犬や猫の免疫力を高めて腫瘍と戦うアプローチとして注目されています。

 

いずれの治療法も、動物の年齢・体調・進行度を考慮しながら選択します。単独で行うよりも、複数の治療を組み合わせることで効果を高められる場合が多いです。

まとめ:専門医療機関での治療について

・80列CTなどを用いて腫瘍の位置・大きさ・転移状況をつかみ、適切な治療プランを立てられます。
・かかりつけ医以外にも専門医の意見を聞く(セカンドオピニオン)ことで、治療の選択肢を広げられます。
・手術・放射線・化学療法などを総合的に実施して、より高い効果が期待できます。
・しこりや食欲不振など、気になる症状があれば早めに診察を受けましょう。
・シニア期には半年に1回のペースで検診がおすすめです。症状がなくても腫瘍が見つかることがあります。

 

横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院

カテゴリー