犬と猫の血液検査について┃病気の早期発見に役立つ

ペットの健康としつけ

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

犬と猫の診察で最も頻繁に行われる検査の一つに、血液検査があります。血液検査は日々の健康チェックや病気の早期発見、さらには治療効果のモニタリングにも欠かせない検査です。

 

今回は、犬と猫の血液検査の実施タイミングや流れ、検査項目など詳しく解説します。

血液検査の基本

血液検査は、「全血球計算(CBC)」と「生化学検査」の2つのスクリーニング検査によって血液の成分を調べ、異常の有無をチェックします。

 

全血球計算(CBC)
赤血球、白血球、血小板の数を測定し、貧血、感染症、炎症、出血の有無を調べます。白血球の種類を確認することで、感染症のタイプやアレルギー反応の有無も把握できます。

 

生化学検査
肝臓、腎臓、膵臓などの内臓の機能を調べる検査です。具体的には、肝酵素(ALT、AST、ALP)、腎機能(BUN、クレアチニン)、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム)などを測定します。これにより、全身の代謝バランスも確認できます。

 

血液検査の実施タイミング

血液検査を実施するタイミングは、大きく分けて以下の3つです。

 

定期健康診断
嘔吐や下痢、元気・食欲の低下など何らかの症状が見られる場合
手術前の検査
┗手術を行う際、止血能に異常がないか、その他の大きな病気が隠れていないかを確認する

 

また、治療中の疾患(腎臓病や糖尿病など)の状態が改善しているか確認するために、血液検査を行うこともあります。

 

血液検査の流れ

犬や猫が採血中に動かないように適切な体位で保定をし、アルコールで皮膚を消毒した後に血管に針を刺してゆっくりと採血します。
採血部位はいくつかありますが、犬の場合は後ろ足(外側伏在静脈)や前足(橈側皮静脈)、首(頸静脈)、猫の場合は太ももの内側(大腿静脈)、首(頸静脈)などから選択します。

 

採血後、通常10分程度で全血球検査(CBC)と血液生化学検査の結果が分かります。コルチゾールや甲状腺ホルモンなどの特殊な項目を測定する場合は、外部の検査機関に依頼するため、数日ほど時間がかかります。

 

血液検査の結果は、基準値と比較することで健康状態や異常の有無を判断します。基準値から外れている項目があれば、その値が高いか低いかによって、体内での特定の臓器や機能に異常がある可能性が示唆されます。異常値が複数見られる場合は、他の検査結果や臨床症状と合わせて総合的に診断します。

 

主な検査項目と意味

主な検査項目と検査を行う目的は以下の通りです。

 

全血球検査 (CBC)
・赤血球数(RBC): 酸素を運ぶ赤血球の数を測定。貧血の指標となる。
・白血球数(WBC): リンパ球、単球、好酸球、好塩基球など免疫反応に関与する白血球の数を測定。感染症や炎症の指標となる。
・血小板数: 血液凝固に関わる血小板の数を測定。
・ヘモグロビン濃度(Hb): 赤血球内の酸素運搬に関与するヘモグロビンの量を測定。
・ヘマトクリット値(HCT): 血液中の赤血球の割合を測定。
・平均赤血球容積(MCV): 赤血球の平均サイズを測定。
・平均赤血球ヘモグロビン量(MCH): 赤血球一つあたりのヘモグロビンの量を測定。
・平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC): 赤血球内のヘモグロビン濃度を測定。

 

血液生化学検査
・肝酵素(ALT, AST, ALP): 肝臓の機能を評価。
・血中尿素窒素(BUN): 腎臓機能を評価。
・クレアチニン(CRE): 腎臓機能を評価。
・血糖値(GLU): 血液中のブドウ糖量を測定。
・総タンパク(TP): 血液中の総タンパク質の量を測定。
・アルブミン(ALB): 血液中の主要なタンパク質を測定。
・総ビリルビン(T-Bil): 肝臓や胆嚢の状態を評価。
・カルシウム(Ca): 骨代謝や神経機能を評価。
・ナトリウム(Na): 電解質バランスを評価。
・カリウム(K): 電解質バランスを評価。
・クロール(Cl): 電解質バランスを評価。
・無機リン (IP):腎臓や上皮小体の機能を評価。
・コレステロール(CHO): 血液中のコレステロール量を測定。
・アンモニア (NH3):肝臓の機能や門脈シャントの存在を評価。

 

異常値が出た場合

血液検査で異常値が出た場合は、解釈に注意が必要です。健康な場合でも、採血のタイミングや方法、採血にかかった時間などで基準値から数値が外れることがあります。そのため、血液検査だけで診断を行わず、臨床症状やレントゲン検査、エコー検査などの追加検査を組み合わせて総合的に判断することが重要です。

 

頻繁に見られる血液検査の異常値としては、以下が挙げられます。

 

・赤血球数の低下:貧血
・白血球数の増加:感染や炎症
・リンパ球の増加:白血病
・総タンパク質の増加:感染、脱水、肝障害など
・血糖値の増加:糖尿病やストレスなど
・尿素窒素 (BUN)やクレアチニンの増加:慢性腎不全などの腎機能異常

 

貧血についてはこちらをご覧ください
糖尿病についてはこちらをご覧ください
慢性腎不全についてはこちらをご覧ください

 

血液検査の限界

血液検査は全身の健康状態を把握するのに役立ちますが、異常値だけで病気を診断することはできません。複数の検査を行うことで、様々な角度から健康状態を把握でき、病気の見逃しを防いだり早期発見に繋がります。

 

そのため当院では、病気にもよりますが血液検査とレントゲンはセットで実施することをおすすめしています。また、追加でエコー検査をおすすめすることもあります。

 

ご家庭での注意点

血液検査を受ける前は激しい運動を避け、なるべく興奮させない状態で来院してください

 

また、検査の直前にフードを与えると血糖値が一時的に高くなるため、食事制限が必要です。多くの場合、検査当日の朝食は抜くよう指示がありますが、水は自由に飲ませても問題ありません。

 

検査後も自宅でしばらく安静にし、採血部位が腫れたり出血していないか確認するようにしましょう。

 

まとめ

・血液検査は全身の健康状態の把握や疾患の早期発見に役立ちます。
・血液検査は主に赤血球や白血球、血小板の数などを調べる「全血球検査」と、肝臓や腎臓の機能、血糖値、電解質バランスなどを評価する「血液生化学検査」の2種類があります。
・血液検査だけで診断を行わず、レントゲン検査やエコー検査などを組み合わせて診断することが大切です。
最低でも1年に1回は血液検査を含む定期健診を受けることが、病気の早期発見と早期治療に繋がります
・かかりつけ医と相談しながら血液検査を上手に活用して、ペットの健康状態を維持・改善していくことが重要です。

 

横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
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