犬の股関節脱臼について┃後ろ足を地面につけないなどの様子がみられる

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

通常股関節は、骨盤の寛骨臼に大腿骨の先端の大腿骨頭がしっかりはまることで、スムーズな後肢の動きが可能となっています。しかし、交通事故などの強い衝撃が股関節に加わったり、先天的な股関節構造の異常があったりすると、股関節が外れてしまい、股関節脱臼が発生します。

 

今回は犬の股関節脱臼について、その原因や症状などを解説するとともに、当院での治療の進め方に関してもご紹介します。

 

原因

犬の股関節脱臼の主な原因は、強い衝撃や股関節形成不全、ホルモンの病気によるものです。

 

強い衝撃
交通事故や抱っこ中に落としてしまうなどの強い衝撃が股関節に加わると、股関節が脱臼します。

 

股関節形成不全
股関節が正常に発育せず、股関節の構造に異常 (浅い寛骨臼と変形した大腿骨頭)が生じます。
股関節形成不全は、ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーなどの大型犬に多くみられます。また、股関節形成不全を持つ犬の場合は、床で滑るなどの比較的弱い力で股関節が脱臼することがあります。

 

犬の股関節形成不全についてはこちらのページで解説しています

 

ホルモンの病気
副腎皮質機能亢進症などのホルモンの病気によって筋力が低下している場合は、少しの力でも脱臼してしまうことがあります。

 

なお、猫での発生は比較的稀です。

 

症状

股関節が脱臼すると強い痛みが生じ、後肢を完全に挙上します。
また、後肢を挙げて3本足で歩こうとする様子がみられます。

 

診断方法

一般的に、股関節脱臼の診断は、歩様検査や触診、レントゲン検査を実施します。

 

歩様検査
後肢の挙上や後肢を引きずって歩いているかなどの、歩行の様子を観察します。

 

触診
股関節の脱臼がある場合は、後肢に触れるとキャンと鳴いたり、後肢がだらんとした脱力を示します。

 

レントゲン検査
脱臼のパターン (完全脱臼か亜脱臼か)、脱臼の方向、その他の関節や骨に異常がないか確認します。

 

治療方法

当院では再脱臼を防ぐため、脱臼した大腿骨頭を切除する大腿骨頭切除術を行っています
大腿骨頭を切除すると歩けなくなるのではと心配される飼い主様がいらっしゃいますが、大腿骨頭を切除することで骨同士がぶつからなくなるため痛みが緩和され、術後に線維性の偽関節ができるため、数週間で歩けるようになります

 

術後はリブレラ®︎という変形性関節症に伴う疼痛を緩和するお薬で、疼痛管理を行います。
このリブレラ®︎は1回の注射で効果が1ヶ月持続するため、ご家庭での投薬が必要なく、飼い主様のご負担も少ないお薬です。

 

リブレラ®︎について、こちらの記事でも詳しく解説しています

 

予防法とご家庭での注意点

犬の股関節脱臼の多くは交通事故や階段からの落下などによって発生します。
そのため、愛犬の散歩中には周囲の状況に注意したり、階段には落下防止柵を設置したりなどしましょう

 

また、股関節形成不全を持つ場合やシニア犬の場合は、小さい力でも股関節が脱臼することがあるため、床や階段に滑り止めマットやスロープを設置することも有効です。

 

その他にも、肥満も股関節に負担をかけるため、健康的な食生活を心がけるとよいでしょう。

 

愛犬や愛猫の健康的な減量についてはこちらをご覧ください

 

ポイント

・股関節脱臼は、股関節から大腿骨頭が外れる脱臼です。
・股関節脱臼は交通事故などの強い力が加わったときに起こりますが、股関節形成不全やホルモンの病気がある場合には日常生活の中で突然脱臼することがあります。
・股関節が脱臼した直後は、強い痛みのため後肢を完全に挙上します。
・当院では、股関節脱臼の治療として脱臼した大腿骨頭を切除する大腿骨頭切除を行います。術後は線維性の偽関節が形成され、正常に歩行できるようになります。
・術後の疼痛管理は、1ヶ月に1回の注射で投薬が完了するリブレラ®︎を使用しています。
・肥満や滑りやすい床、段差などは股関節脱臼のリスクを上げるため、適切な食事管理や
滑り止めマット、スロープの設置を行い不慮の交通事故を防ぎましょう。

 

横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院

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