犬と猫の原発性肺腫瘍について┃診断ではCT検査が有効
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
肺腫瘍には、肺組織から発生する「原発性肺腫瘍(肺がん)」と他の臓器の悪性腫瘍が肺に転移した「転移性肺腫瘍」に大別されます。このうち、転移性肺腫瘍が大多数を占め、原発性肺腫瘍は犬では全腫瘍中の1%、猫ではそれ以下ですが近年増えつつあります。
今回は、犬と猫の原発性肺腫瘍の原因や症状、診断、治療方法などをご紹介します。
原因
原発性肺腫瘍のリスク要因として、日常生活での汚染物質の吸引や受動喫煙が示唆されていますが、はっきりとした原因は不明です。
犬や猫では原発性よりも転移性が多くみられます。特に乳腺腫瘍や骨肉腫、移行上皮癌、悪性黒色腫 (メラノーマ)は肺転移を起こしやすいため、注意が必要です。
◼️転移を起こしやすい腫瘍については下記をご覧ください
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症状
犬と猫の原発性肺腫瘍の多くは孤立性であり、転移することは稀です。
初期症状は咳が認められ、やがて少しの運動で息切れをしたり、喘鳴音を伴う呼吸障害などが現れたりします。さらに、肺腫瘍が原因で胸腔内に水が溜まると呼吸困難になる場合があります。
稀ですが、肺腫瘍が指先に転移した場合、これを肺指症候群と呼び、指先が壊死して跛行のような症状を示すことがあります。
一方で、原発性肺腫瘍を持つ犬猫は末期まで症状を示さないこともあり、健康診断やその他病気の検査の中で偶発的に肺腫瘍がみつかることもあります。
診断方法
肺腫瘍の診断は胸部レントゲン撮影やCT撮影を用いて行います。
写真の赤の矢印が 原発性肺腫瘍のCT画像です
胸部レントゲン検査は全身麻酔をかけずに行えますが、腫瘍の直径がある程度大きくないと診断できないことがあります。一方でCT検査は直径1mmほどの小さな病変でも診断することができる上、手術前に切除部位を特定できたり、腫瘍と胸膜の癒着の有無を把握できるなどたくさんのメリットがあるため、CT検査が必須になります。
治療方法
孤立性の肺腫瘍の場合、外科切除が第一選択です。
腫瘍が小さく辺縁に限局している場合は肺葉の部分切除で治療可能ですが、一般的には、その腫瘍が存在している肺葉を丸ごと切除する肺葉切除を行います。
肺葉切除において、全肺容積の約60%までの切除であれば、術後に深刻な呼吸障害は生じないと言われております。
なお、抗がん剤を用いた化学療法や放射線療法は単独ではほとんど実施されず、術後に補助的化学療法として使用されることがあります。
リンパ節への転移がなく、孤立性に発生した原発性肺腫瘍の場合、肺葉切除術により良好な予後が期待できます。しかし、再発の可能性もあるため、術後は定期的にCT検査を行い経過観察することを推奨します。
ご家庭での注意点
残念ながらご家庭で原発性肺腫瘍を予防する有効な方法はありませんが、受動喫煙がリスク要因として示唆されているため、ご家庭でタバコを吸われる方がいる場合は、家の中ではタバコを吸わないなどの配慮が大切です。
また、腫瘍の治療の基本は早期発見・早期治療なので、愛犬愛猫の呼吸の様子に異変を感じたらすぐに動物病院を受診してください。
まとめ
・肺腫瘍は肺組織から発生する「原発性肺腫瘍」と他の臓器の悪性腫瘍が肺に転移した「転移性肺腫瘍」に大別されます。
・原発性肺腫瘍は犬では全腫瘍中の1%、猫ではそれ以下の発生率です。
・肺腫瘍の診断は胸部レントゲン撮影やCT撮影で行います。
・CT検査は検査精度も高く、手術前に切除部位を特定できるなどのたくさんのメリットがあるため必須の検査です。
・原発性肺腫瘍の多くは孤立性に1つの肺葉に限局して発生し、転移がない場合は肺葉切除で良好な予後が期待できます。
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つだ動物病院
〈参考文献〉
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/22/2/22_46/_pdf/-char/ja