ステント治療

ステント治療とは?

ステントは気管や尿管、尿道など筒状の器官がつぶれないように内側から支える網目状で金属製の筒です。Cアーム(外科用X線撮影装置GEヘルスケア製OEC Brivo)で透視画像を見ながらステントを患部まで運びそして展開します。人では心筋梗塞や脳梗塞で狭くなった血管を広げるのに広く施術されているのでご存じの方も多いと思います。
近年、動物専用のステントが開発され犬や猫でもステントを用いた治療が出来るようになりました。

尿管ステント

猫の尿管閉塞は比較的まれな病気ですが近年、増える傾向にあり注目されている病気です。

尿管は腎臓で作られた尿を膀胱に運ぶ管です。腎臓で出来た結石が尿管に流れ込んで、途中で引っかかり詰まってしまうのが尿管閉塞です。シュウ酸カルシウムの結石が増えているのが一番の原因です。他にも腫瘍や炎症が原因でも閉塞を起こすことがあります。一般的な症状は元気消失、食欲不振、乏尿、無尿、などです。

猫ではストルバイトとシュウ酸カルシウムの二種類が結石の大部分を占めています。ストルバイトは抗生物質の投与で細菌感染を抑えることと処方食で比較的コントロールしやすいのですが、シュウ酸カルシウムは体質に起因することが多く処方食などでの管理が難しいとされています。

レントゲンで確認

診断はレントゲンで腎臓の大きさをチェックします。閉塞を起こしていると腎臓が大きくなっている場合があります。その後エコーで腎臓の内部の様子、特に腎盂(腎臓の内側で尿が溜まる部分)の拡張を観察します。それだけでは実際に腎臓が尿を作っているかどうか、機能しているかどうか判断できない場合がありますので、排泄性尿路造影を行い造影剤含む尿が腎臓~尿管~膀胱に流れる様子をレントゲンで観察します。術前にはCTスキャンを用いて結石の有無を最終的にチェックします。
複数の治療法の一つが尿管ステントです。ステントを入れることで尿が腎臓から膀胱に流れるようにします。結石が少なくて炎症も少ない場合は手術で摘出する場合も多くあります。
この写真の猫ちゃんでは複数の結石が尿管を塞いでいて腎臓にも結石があったためステントを用い手術を行いました。

気管ステント

犬の気管虚脱は中高齢のトイ種(チワワ・ポメラニアン・マルチーズなど)に多く発生します。「ガァガァ」とガチョウの声のような咳が特徴で、長く続くと体内の酸素が足りなくなり、チアノーゼを起こしてしまいます。

原因は心臓病性の発咳や慢性気管支炎、肥満、遺伝的素因と言われています。診断は吸気(息を吸ったとき)と呼気(息を吐いたとき)のレントゲン写真や透視で診断し、胸部気管虚脱と頸部気管虚脱に分けられます。多くの場合、湿度の高い時期や夏場に悪化し、過度の運動、興奮も良くありません。

気管は図のように35~45個の気管軟骨を弾力性のある輪状靭帯で連結したフレキシブルパイプのような構造をしています。
正常な気管軟骨はC型ですが気管虚脱では扁平に潰れてしまします。写真の矢印の部分が虚脱を起こし扁平になっている部分です。一度潰れてしまった気管軟骨は残念ながら元には戻りません。

軽度の場合、内科療法でよくなります。できるだけ興奮を避けたり、梅雨時は除湿器で湿度を下げ、夏はエアコンを使い室温を下げることで悪化を予防することが出来ます。また肥満気味のワンちゃんは減量するのが一番の薬になります。
重度の場合 様々な外科的治療が試されています。それぞれの術式に問題点がありゴールデンスタンダードがないのが現状です。

信頼あるステントメーカーを採用

当院ではINFINITI MEDICAL社の気管ステントを用いた治療を行っています。
ステントによる治療は気管虚脱の緩和であり治癒ではありません。ただステントの破損、異物反応などは従来の製品より大幅に改良され、データでは75-90%に症状の改善が認められています。

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